Tosastudy

私が創造した世界



地名説明画像準備中
目が覚めると、そこは異世界だった― 的な事が起こってしまった訳であるが、 どこか既視感のする世界である。 思い出せないが、それよりも 「異世界でしたかった事」にリソースを向けよう、そう思った。
異世界でしたかった事。国づくりだ。 国というよりも都市かもしれない。 この世界の文明レベルは分からないが、 現代都市を完全再現したいものだ。
じゃあまず人探しから、と思えば誰もいない。 探索しながら食糧となりそうなものを狩っていく。
うさぎ、兎、ウサギ…兎(ウサギ)ばっかりじゃねぇか?
そう思って辿っていくと、格子風の箱からウサギが湧いていたのだ。 そして思い出した。この世界について。

この世界は私が作った世界だ。 しかしやけに描画が綺麗すぎる。 というのも、この世界は「minecraft」の世界のはず。 さっき見たウサギなんて本物同然である。 まずはここがどこか把握する必要がある。 アイテム欄を探っても、ウサギ肉しかない。 と思えばアイテムとは別に地図データがあった。 これが世界を建てた特権か、何かに使えるかもしれない。 とはいってもここがどこか分からなければ、地図など無用の長物。 取り敢えず同じ方向へ歩き続けるしかない。 そうすれば分かるだろう。

見えたのは峡谷であった。 随分と前に架橋したらしく記憶には無いが、難なく横断可能である。 橋を渡っていると、声が聞こえる。どうやら下から聞こえる。 私と同じく異界人かもしれない。 降りてみるとそこは何層かに分かれていた。 過去の自分がダンジョン風に作ったのだろう。 下―といっても恐らく最下層―に助けを求める声がある。 確かここにはゾンビスポナーを大量に置いたはず。 もし食われてしまえば? 弱化ポーションと金リンゴで治る保証はない。 折角の手掛かり、逃すわけにはいかない。

急いで最下層へ向かう。 といっても裏道を思い出しながらなので そこまで苦労はしないが。 1分後、水上落下(ラストスパート)に成功しつつ、最下層に辿りついた。 そこにいたのは、私の初恋の相手、美子であった。 黒髪で華奢な私より少し背の低い女の子。 何故ここにいるのか、と訊いたが、やはり分からないとの事。 取り敢えず登らねば。そう思っているとゾンビが降ってきた。 手を引いてさっき来た裏道を戻る。 地表まで来た頃には50mほど駆け上がったらしく、 道を土で塞いだ後の記憶が無い。

気付けば夕方まで眠っていたらしい。 隣ではまだ美子が寝ている。 夜になると流石に危ないので、 何とか知っている市街地まで最短距離で走り抜けた。 「外街1区」―私が建てた、最初の植民地区―。 閉門寸前で入れてもらい、何とか宿を借りようとするも、カネがない。 どうやらここには私達同様の異界人が沢山いるようだ。 通貨にはエメラルドよりも金や鉄が用いられていて、 他にも沢山町があるらしい。まあ私が建てたんだが。 某漫画を参考に作った3重城壁は機能していて、 外街1区~10区と中街1区~4区が連合し、 「三壁共和国」なるものを作っているらしい。 壁内では既に危険な生物は駆逐されており、 夜でもそれなりに安全だという。

それなりに安全とはいっても疲労困憊の中、 美子を連れての移動は危険すぎる。 じゃあ金目のものは、そうだ。地図データがあるではないか。 あれをインポートさえ出来れば。 製図屋に行くと、やはり驚かれた。 製図屋「これは金ブロックがネオ・ファロス島並みに要るなぁ」 ネオ・ファロス島―私がクリエイティブモードで作った金の塊。 金ブロックを10000個以上は使ったから、 1基で1000億円くらいに相当する。 ここからなら近いが、誰が所有しているのだろうか。 取り敢えず製図屋には今日の宿代を出して貰い、一夜を明かした。

一夜が明けると、外街1区は大騒ぎとなった。 「謎の旅人」がとてつもない広さの探索図を持ってきたという噂だ。 もしや私の事では、と思いつつも壁内に入ると、 ゲームでは見慣れた光景が広がっていた。 しかし今の目的は壁内探索ではなく壁外探索。 三壁共和国を後にして、他の都市も見ておきたい。 外壁の南東口から出るとネオ・ファロス島がある。 この世界で間違いなく最も高価な建造物である。 解体すれば小国程度の軍事力は容易に手に入る。 開闢から数日のこの世界なら最強のカードである。 この所有者を明確にしておかなくては。 南東口を出てすぐ、金の箱が見える。 黄金の図書館に黄金灯台、黄金宮殿が併設されている。 しかし入ってみると誰もいない。 何故だろう。その理由はすぐに分かった。

二足歩行の犬のような、爪の異様に長い、黒い化け物がいたのだ。 我々はすぐに1つしかない細い出口から転げ落ちながらも、脱出した。 当面の間はこの化け物が資産を守ってくれるようなので、 放置しておいてよさそうだ。 すぐ近くの三壁市ですら手出しができていないのだ、よほど強いのだろう。 本来は「ネオ・ファロス島を守るため」の海上要塞であるサンドリアに戻る。 エンダーチェストがあったので、確認してみる。 するとフルエンチャントのネザーライトソードがあるのではないか。 「修繕」も付いているので、失くさない限りは最強である。 これなら化け物退治ができるのではないか。

翌日、フルエンチャント・ネザーライトソード、略して剣を持ち、 ネオ・ファロス灯台の扉を開く。 化け物が全速力で向かってくる。 これが鉄の扉でなければ既に三壁市にも被害が及んでいる事だろう。 剣を備える。あとは斬れるか否か。いや、突く方が確実か。 化け物が襲い掛かってくる。すると突き立てた剣に刺さる。 まだ暴れている。重さが限界なので下ろしてから斬る事にする。 しかし何度斬ってもなかなか倒れない。 こっちは「ノックバック」のお陰で生きているようなものだ。 延焼ダメージもあるはずなのに、そう思っていると、 何十回斬ったか分からない、その頃に倒れて経験値を放って消えた。 後から思えば、エンダードラゴンの亜種のようなものだったのだろうか。 入りにくいようにブロックを置きまくって逃げるように去る。 存在しなくなってしまった化け物の存在を信じさせないと、 三壁市は今すぐにもこれを解体して大帝国を築くだろう。 そういえば、三壁市があるという事は私の建設した 「東安」市や「月都」市には同様に国家が存在するのだろうか。 少し楽しみに思いつつ、探索を開始した。 東安市は三壁市とは湾を共有する形となっている。 つまり東安への道のりはただ湾岸を進めばよい。

東安行初日、サンドリアを後にした我々は湾岸を進み、 早くも東安が見える距離まで辿りついた。 しかしここで問題が生じた。 東安は「魔獣戦線化」していた。 数万はいそうな骸骨騎乗兵にハスクの大群。 そこに暴走状態の蜘蛛が大量発生し、城外は地獄絵図であった。 幾ら最強剣を持っていても、数には勝てない。 もし三壁市の全市民を重装歩兵化しても勝算は薄い。 一目でそう思わせるような数である。 東安城は南北に長く、「天子北面」状態の都市である。 海側も囲まれ、食糧問題で崩壊するのも時間の問題だろう。 東安の城壁を守るには1000人は必要だが、 耕地面積は宮殿の数十人分しかないはず。 また東安が落ちれば他都市にもこの火の手が及ぶ可能性が高い。 ならば東安を守らねば。 何としても東安への食糧確保をせねば。

東安行2日目、サンドリアから海底を這うように延びる海底通路を通り、 道に迷いつつも、東安包囲網の内側に至る。 まさか道楽で作った海底回廊が役立つ日が来ようとは。 そう思いつつ、東安まで進む。 東安で道行く人に訊くと、ここは「人類帝国」の首都らしく、 市民は他都市が破滅したものと思っているらしい。 最も驚いた事は、東安の市街予定地が悉く農地化されていたのだ。 僅か数日で1000人分の食糧を確保できるようにするとは。 しかし弓矢や剣はどこから調達したのだろうか。 すると、彼らは武器接収によって補っているらしいと分かった。 次々と登り来る敵を倒し、その武器を使っているらしい。 このように国民皆兵の千人王国が、 長期に亘って数万の敵を退けていると聞くと、皇帝がよほど有能なのだろうと思う。 特に怪しまれる事もなく―とは「城外の民」という事でいかなかったが、 宮殿に入ってみると、宮殿も殆ど耕地化されていた。 床は剥がされ天井とともに投石に利用され、 見るも無残な仕切りのみが残る農場となっていたのだ。 宮殿を進むと、皇帝自ら迎えにやって来た。 城外の様子は全く分からないらしく、 正門・西門・東門・南岸の4戦線からはモンスターしか見えないという。 戦線も疲弊しつつあり、休息で人員が足らぬ所だという。 四六時中、止む事のない敵の攻城は休息を大いに妨げ、士気の低下が顕著だという。

そこで私は城外への調査派兵を提案した。 このまま東安城にいてもいずれ負けると思ったからだ。 1番化け物の数の多い東方に何があるのか。 これを探ってみないと何も分からない。 東安城の東大門を開き、騎兵で敵「群」を突破して全速力で離れる。 草原の向こうには川があり、川沿いを進む事とした。 連れてきた兵は早くも100人が40弱となり、戦力の大幅減となってしまった。 とはいってもゲームだから、リスポーン機能があるのだが。 化け物のやってくる先を観察するため、高い岩山の上に陣を張る。 奴らはやはり東から来ている。そう確信して、 なるべく遠くを見ると、ある兵が城壁のようなものが見えるという。 その方向を見て、私の作った都市に違いないと思った。 その都市のモデルはバビロンである。 となるとやはり、建築限界まで建設した「バベルの塔」から出てきているのだろうか。 この読みは程なくして当たっていると分かった。 バビロンに川経由で到着すると、 一面モンスターだらけである。 非常時用にエンダーパールを用意しておいた。 勿論隠しチェストに入れていたものではあるが。 これを使えば、自分1人なら、最上階まで行けるかもしれない。 という事で兵士には塔の入口を守るように指示した。 もし発生原因を潰しても、制御を失った奴らが却って危険になるかもしれないからである。 そして今、ダイヤ剣とエンダーパールを持って、いざ突入である。

バベルの塔は建築限界まで建っている。 つまり100ブロック以上登らねばならない。 創造者で隠しチェストから出したからとはいえ数は有限。 なるべく自力で登っておきたい。 そうしていると第1の敵が現れた。 エンダードラゴンである。とはいっても 閉じ込められているような印象すら受ける。 こんなものに行動されれば、下の兵は勿論、この塔ですら崩れてしまうだろう。 今ここで倒すのは不可能に思える。 しかし奴の巨大な図体では階段は登れないだろう。 ならば戦わず登るまで。 こうして私は第1の敵を無視し、第2階層に辿りついた。 第2の敵は歩くゾンビスポナーである。 村人の頭がスポナーになっており、 それがゾンビを生み出していた。 囲まれては食われてしまう。 こうしてワープするしかないといって、結局第3階層までに 殆どのパールを使い切ってしまった。 最終階層たる第3階層はただ登るだけ、果たして本当にここが発生源なのだろうか。 遂に最高地点、建築限界だ、そう思っていると、上に黒いスポナーがあった。 何がうずめいているか分からない、闇の深いスポナーである。 すぐに破壊し、入口に戻るためにパールを投げる。 そこには赤目のモンスターが大量にいた。このままでは全滅する。 1点突破で東安に戻る。制御を失った化け物はせいぜい「東安城外の憂い」程度となり、 東安攻囲戦はこれで終結した。

東安を後にした我々は、拠点のある外街1区に戻っていった。 その最中、重装歩兵団が森から現れ、 突如美子を人質に取って、山賊行為を誰にも言わぬよう述べた。 気に食わないので、隠しチェストに貯めていた発火剤で森を焼き払い、 山賊行為を働きにくくした。奴らはやがて燃やし残した場所に集まり、 そこと本拠を往復するようになった。 後をつけて本拠地を探すと、白亜の城壁がそこにはあった。 製作中だった自信作の都市、月都市だ。 モデルはコンスタンティノープルである。 建設中の立地が山賊には丁度だったのだろう。 城壁しか作っていないこの未完成都市に何人いるのか、マップで見てみると約3000人。 このワールドにある街としては最大人口であろう。 内部は外壁と内壁の間が放牧用地、内壁側が宅地らしい。 この難攻不落の都市には1つだけ弱点がある。 そこを突けば陥落するはずである。 沿岸部には城壁を建てていない。 海からの脅威は無いと判断したためである。 そこから攻め込めば問題は皆無である。 すぐに木を、と思ったが周囲200ブロックほどの木は全て無くしてしまったので、 わざわざ一山越えねばならなかった。 そして船を作り攻め込む。 ここで問題が生じた。鉄製武具を備える彼ら相手に私は、一本の枝すら無かったのだ。 かろうじて命を存えた私は武器庫を解放せざるを得なかった。 この世界の全てを引っくり返す、最強の武器庫を。

それは海抜30ブロックの岩山の上にある。 幸い、まだ誰にも知られていないらしい。 外街1区からも南に100ブロック以上遠く、月都の西果てである「黄金の門」から見えるか見えないかくらいである。 武器にはエンチャントといった魔術効果の付与ができるが、 ここには「モメント」と称したフルエンチャントの剣の収蔵庫がある。それも1万本以上。 この武器庫のある「高山市」―モデルはローマである―は半ばローマ風とはいえなくなっている。 岩山の上という事でアーサー王伝説のキャメロットのようになってしまっているのだ。 この武器庫から最強兵装を取り出した私は、万一死んで装備が奪われてはいけないので 再復帰ができるアイテムである「不死のトーテム」を10本ほど持っていきながら、 月都市の正門である「黄金の門」から正面突破する事とした。 守備兵は3人。一撃で切り伏せていく。日本刀ならこれでなまくらだ。 だが「修繕」のエンチャントのお陰で磨り減らない。 牧草地には非武装の者を含めて500人ほど居るらしい。 だが最短ルートで進まねばならない私は、兎に角道路を走った。 内壁―かの都市ではコンスタンティヌスの城壁と呼ばれる壁―が見える。 内壁から百人強の武装兵が出てくる。 武器を"蒼い槍"こと「トライデント」というアイテムに持ち替え、 迂回しながら槍を振り回した。 戦う事が目的ではなく、美子の救出が目的であるからだ。 百余人の幾分かをノックバック効果で突き飛ばし、 内壁の門に到達する。内壁の門は普段は開いているが、内側からロックを掛ければ入れない。 しかし内壁には数倍どころか十数倍の人数が居た。 素性が知られぬように山賊共に紛れ込み、 まずは首領とおぼしき人物を探す。 と思いきや、どうやら内壁の上から様子を覗っていたらしい。 私が人影を認めると同時に、総攻撃の命が下る。 炎属性効果やノックバック効果があるとはいえ、数百人斬りというものは不可能だろう。 ならば首領と一対一で戦うしかない。 追っ手を斬り伏せながら急いで内壁の梯子を上り、美子の安否を訊く。 美子の居所はどうやら地下らしい。道理で見つからない訳だ。 引渡しには1つ条件を突きつけてきた。

この山賊3000人の食糧問題の解決であった。 山賊行為を働くのは三壁市を追い出され、行くアテもなく 彷徨っていたからだという。 そして今、農耕地が欲しいのだという。 月都に水道はなく、略奪品で食糧と武器を調達する彼等に 水を操る術は無かったのだ。 そして私は農耕用地のある高山市を紹介した。 高山市はまだ誰にも見つかっておらず、 そして岩山の南や西には農耕用地があるのだ。 更に言うと、私はこの都市の住民が欲しかった。 そして条件として、"元"山賊は全員、我が国「月都帝国」の国民となる事を付け加えた。 しかし彼等はとても喜んでいた。何故ならこれで山賊をしなくて済むのだから。 そして新たな国「月都帝国」に受け入れられたのだから。 高山市には約1000人が屋根のある場所で住むことができる。 内壁や外壁で雨宿り程度に暮らしていた"元"山賊たちは大喜びであった。 彼らはこの世界に転移して安住の地である壁内を追い出され、半野宿を強いられていたのだ。 そして私は彼等を高山市の守備隊とする事とし、武器庫の武器を与えた。 税金は取らず、賦役として緊急時の従軍のみを義務とした。 対して三壁市では重税が課され、債務奴隷となる者もいるのだとか。 商業相手の都市こそいないものの、屋根のある高山市は大いに栄え、 競馬場や市場として作ったはずの建造物も集合住宅として改装するほどだった。 やがて私の住まいのはずだった宮殿も縮小し、 高山の人口は周辺を含めると2000人程度となった。

しかしそんな高山に近づく者が現れた。 北門に現れた鉄騎兵がいきなり攻め上ってきたのだ。 キャメロット風にしたのが幸いしたか、 攻城兵器を持ち合わせていない彼等は撤退していった。 とはいってもいずれ攻略部隊がやってくる。 ならば先に叩くまで、という事で追撃を行わせた。 すると生き残りは外街1区に行った模様。 どうやら三壁市が植民地を置こうとしているらしく、 その調査部隊のようだ。地図データを売った時に、 世界創生時から"既に開拓されている"高山市の存在を知ったのだろう。 数日後、外街1区に動きがあった。 外街1区と高山を隔てる100ブロックの森を伐採しようとしているらしい。 軍事道路を造る気であろう。 これは好都合だ。門が開きっぱなしになるため、奇襲を仕掛け易い。 翌日、高山に完全武装の守備隊1000を残し、 完全武装の兵2000を分散させつつ建設中の道路を囲んだ。 まず、外街の門を占拠する。そして建設員を人質に取り、不可侵を約束させる。 この計画は概ね上手くいった。いや、いきすぎた。

私が率いる外街大門攻略隊が外街の門を占拠した際、 守将は早々に逃げ出し、守備隊を含め市民は歓迎する有様であった。 しまいには何もしていないのに、外街1区が降伏してきたのだ。 そして外街1区の内門が自ずと開き、市民に侵攻を促されたのだ。 住民から聞く話には、どうやら今回の高山市への侵攻は三壁政府の目玉政策だったらしい。 つまり、不可侵条約には中央政府との交渉が必要らしい。 これを聞いた私は、三壁遠征を決定した。 まずは1区と繋がり「内側の外壁」に隣接する外街2区に交渉のための使者を送った。 しかし結果は拒絶どころか、軍隊が送られてきたのだ。 外街1区・2区間の戦いで勝利した私は、外街2区に火を放った。 外街全12区のうち唯一の木造市街区の2区は、 不可侵交渉拒絶の見せしめに丁度であった。 市民は既に逃げ出していたが、急いでいたからか殆どが置き去りであった。 そのため、略奪を許してからであったが。 外街2区を焼き尽くした私は、2枚目の壁の内側にある外街3区を訪れた。 そこでは歓迎を受けた。焼き討ちの報は進軍と同時であったが、 それ以前に外街3区では政府不信が募っていたらしい。 そこで私は中央政府の位置を知った。

中央政府は3重の壁の中心に位置する上街区や下街区ではなく、 最北の地に位置する外街10区なのだという。 そして更にこの不満の要因を知った時、私は驚いた。 重税が原因なのだという。 三壁共和国は始め、外街10区率いる北三壁と 上街区が率いる南三壁の連合政府だったらしい。 権力闘争に敗れた南に対し、北が搾取を続けていたのだという。 では何故外街2区は反発しなかったのか。 それは直轄地扱いだったからだとか。 それに対して他の上街区や下街区、外街1区や3~5区はずっと虐げられてきたのだとか。 そして私達は、かつての連合政府の拠点であった上街区を無血占拠した。 上街に置いた占領地統治局には南三壁の旧統治者を入れ、協力を要請した。 こうして月都帝国の北伐は南三壁の独立戦争にも発展した。 連敗を喫している三壁共和国はトロッコ鉄道の整備されている外街5区以降に軍備を整えたらしく、 外街4区を放棄したらしいと報が入った。 外街5区とこちら側を結ぶ湾岸大橋の西詰には数え切れない程の兵士が立っている。 一方こちらも壁の門の一部を一時撤去したために兵員輸送が簡便となり、 東詰やその背後には1000人を下らない完全武装の兵士が居る。 兵装では圧倒的有利にあるが、殆ど戦っていない向こう側にそれが伝わる訳もなく、 向こう側は数で圧倒すれば良いと思っているのだろう、次々に数が増えていく。 そこで私達は陽動作戦を実施する事とした。

TNTトロッコを東西を結ぶ湾岸大橋に仕掛け、西詰で爆破するのだ。 そしてその混乱に付け込む形で外街5区に攻め込むのだ。 攻め込むのは湾岸大橋からではなく隣接する壁の上から。 壁を背にして戦う5区にとっては背後からの攻撃となる。 この作戦ならば、武器の圧倒優位を悟られずに勝てる。 5区を奪取すれば交渉も楽だろう。そう考えていた。 結果は上々のもので、少しの抵抗はあったものの殆どが鉄道で北走し、 外街5区もこうして圧政から解放された。 しかしそろそろ戦線の延びすぎが気になる所だ。 現状の兵力なら兵站を分断されようと押し戻せるのだが、油断は禁物である。 そして私は道のりにして1000ブロック先の、東安に使者を送った。 三壁に攻め入って欲しいという旨だ。 条件として外街11区と12区の割譲があったが、我が国の利権には関係ないので承認し、 こうして共同侵攻が始まった。 また東安にも完全兵装を100個譲渡したため、東安軍も半ば無敵状態である。 三壁共和国は2正面作戦を強いられ、過疎地域である外街11区・12区を放棄した。 そのため、東安軍の外街11区・12区接収は予想より早く進んだ。 対して外街6区から8区には全兵力が集まった模様で、 氷柱が針のように立つこの地で唯一の交通機関・鉄道の路線上に 所狭しと、隙間なく並んでいるのだ。 これに対して我々は無人トロッコをぶつけて対応した。 こうして彼等の多くは転落していった。 残った者を掃討しつつ6区に侵攻すると、 6区では建造物の上から射掛けるなど、非常に好戦的だった。 しかし6区の建造物の屋根の多くが木造で、 発火剤を投げ込まれた家々の屋根は焼け落ちた。 市街戦の結果、外街6区は住民の人的被害こそ無かったものの、 殆どの家屋が屋根なしとなった。

外街6区を制圧した結果、東安軍と連絡を取れるようになった。 東安軍は既に外街12区を占拠し、11区で戦闘中との事。 北に向かうと外街7区。 ここは三壁共和国にとって首都圏防衛の最後の砦であるはずだ。 更に北の8区まで戦線が近付けば、首都の10区に影響が及ぶ。 一方でこちらも8区まで攻め上れば、補給線が延びきってしまうが、 6区を制圧しても三壁は交渉に応じない。 両軍ともにこの7区が限界点なはずだ。 そして私達は更に耳よりな情報を入手した。 三壁の植民地だった、壁外の石野属州でも独立戦争が起こっているらしいのだ。 そして反乱軍が同盟を要請してきたのだ。 既に月都・東安連合軍は三壁本土の南半と東半を占領している。 そこで壁外属州の反乱軍も糾合したとなれば、 流石に交渉に応じるだろう。 そして反乱軍に同盟承認の使者を送った。 但し条件に、西石野の割譲を加えて。 西石野が手に入れば、壁外から直接首都攻撃が可能となるのだ。 更に未開発地帯が広がっており、森林地区であるため 戦後の発展が期待できるのだ。 同盟を結べば、外街7区に攻め入らずとも交渉できるかもしれない。 更に西石野という未開発の飛び地を手にして、 三壁との通商も望めるかもしれない。 とはいってもまずは同盟締結まで待機。 屋根のない雪原の6区は非常に寒いものだったため、 急いで資材を持ってこさせた。 焦土作戦としては敵の成功なのかもしれない。

同盟が締結され、開戦からゲーム内で約2週間。 三壁への和平提案は無視され、外街7区侵攻の刻限が訪れた。 敵もやけくそらしく、5区が外壁伝いに攻略された事から、 外壁の一部を爆破していた。更に鉄路も数本を残し破壊している。 もし攻略しても、補給ができなくする予定らしい。という事は持久戦に挑む気か。 しかし向こうも長続きせぬはず。穀倉地帯の石野が反旗を翻した今、 残る領土は首都圏のみ。つまり食糧難のはずだ。 幾ら備蓄していようと、人口は1000を超えているため、 包囲され続ければいずれ枯渇する。 それにどうやら敵は、6区から10区へと続く 地下鉄の存在に気付いていないらしい。 加速レールで複々線、物資も兵員も一瞬で運べるのだが、 偵察兵によると、10区直下まで進んでも無人だったとか。 勝機は圧倒的にこちらにある。 反乱軍は既に北壁を包囲したらしく、 門で戦闘が起こっているとか。 東安軍は10区の東端に到達し、城壁にて両軍膠着しているらしい。 西壁には西石野からの軍が既に押し寄せており、、 ここで飾りの城壁しかない南側を落とせば、 逃げ道は全くない。 仮に逃げられたとしても、そこは対立するいずれかの勢力圏である。 外街7区は、壁外や12区への鉄路など、交通の要衝にある。 ここを落とされれば、三壁の逆転は完全に不可能となる。 そして7区に進軍すると、弓矢や弩、剣や槍などの攻撃の雨を受けた。 最初は劣勢であったが、斬り進めていくにつれ、高架上からの射撃程度になった。 そして高架上の敵を掃討するため、7区駅を占拠した。 7区駅には40番線ほどあり、ここを落とされる事は四方領土を失う事を意味する。

高架上の敵を斬り落とすと、外街7区での抵抗は殆ど無くなった。 コンクリート造りの高層建築物に立て籠もる事もできるのに。 反乱軍や東安軍に兵力を割かれ、もう余剰兵力がないのだろう。 そして7区で一番高い建物に白旗が上った。 続いて奥の8区や9区でも白旗が揚がった。 10区までの道のりは奇襲に備えて高架上ではあったためか、 無人で、勿論無抵抗であった。すると途上に、 大きく華美な旗とともに、数人が現れた。警護兵と代表者のようだ。 大統領と名乗るその人物は、講和の条件を訊いてきた。 折衝がある事を見越して、6区までの割譲に石野の独立、 そして11区と12区の東安への割譲まで要求した。 すると大統領は、少しの躊躇いも無くそのまま了承し、講和文書に調印した。 三壁側では非常事態という事で大統領に権力集中が行われたらしい。 この大割譲により、三壁の本土は首都圏である7区から10区までとなり、 唯一の壁外植民地・石野の独立を認め、 更に発展の期待される11区と12区を東安が掠め取り、 南三壁と西石野を月都帝国が獲得した。 三壁では侵略の端緒となった南進策を唱えた派閥が追放されたとか。 脅迫のつもりが侵略となり、更に独立戦争にまでなってしまった。 この完全兵装はあまりに強すぎる。 東安に貸与した兵装と今回使用した兵装は1つ残らず全て回収し、 高山の宮殿の隣の武器庫に封印した。 そして南三壁からは撤兵し、同盟国として三壁公国を独立させた。 三壁公には南三壁の指導者で、かつての連合政権にも関わっていた者を指名した。 西石野には戦功のあった者に土地を分け与え、直轄植民地とした。

一方で三壁では食糧不足が深刻化し、餓死者が続発した。 リスポーン設定が更に国民を苦しめているらしく、 三壁共和国は瓦解の危機にあった。 穀倉地帯だった石野属州から極めて安価で入手していた小麦が、 今、一部ではダイヤよりも重んじられるようになっているとか。 東安商人はこれに商機を見出し、余剰食糧の輸出を始めた。 東安は市街予定地を一面穀倉地帯にしたため、 余剰食糧が発生していたのだ。 そして東安から外街11区への水運が整備され、 三壁共和国は建国以来の危機を脱した。 しかしこれまで収奪してきた富は流出し、 「世界最大にして唯一の国家」から 「世界最小にして最貧の国家」へと転落していった。 落日の北三壁を捨てて南三壁に移住する者が増え、 北三壁は食糧調達のために更に重税を課し、 そしてまた人口が減少する、といった連鎖に陥った。 これには1つの問題があった。 東安は量に応じた支払いではなく、安定した供給に対する支払いを求めていたのだ。 つまり、人口が減少しても支払額は減少しなかったのだ。 北三壁は次々と不動産を売り払い、 首都繁栄の象徴とされた500戸建のマンションですら 東安へ担保として取られたのだとか。 やがて北三壁の国民らは10区の城である新街城周辺にスラムを形成した。 そこ以外に住む場所を失ったのだった。

衣食住もやがてままならなくなった北三壁では、 首都でクーデターが勃発した。 無能な共和政府に代わり、軍人皇帝を立てるよう要求し、 首都から逃れようとした大統領は拿捕され、三壁帝国が成立した。 このクーデターに熱狂した一部の北三壁系の移民が北三壁に回帰し、 北三壁の経済再建が行われ始めた。 手始めに東安に奪われた資産を取り戻すとして、外国資産の国有化を行った。 東安はこれに猛反発して侵攻するも、スラム街でのゲリラ戦法に苦戦し、 補償金の支払いを条件に講和した。 そして新街城内を農地として開放し、雪原の農地化にも励んだ。 更に石野侵攻を企図し、月都とは不干渉の密約を交わした。 月都からの融資依頼も申し入れてきたが、 それは不動産担保の没収の可能性があるため拒絶した。 南三壁の一部にもこの動きに期待する者が現れ、 「分断された」三壁の再統一を掲げて南北会談が行われた。 対石野戦に勝利した三壁帝国は、三壁公国を併合する形での再統一を目論見、 三壁公爵に自治を約束して併合承認を取り付けた。 形式上は月都からの買収であったため、月都はこれを承認した。 第2次石野-三壁戦争に勝利した三壁帝国は、石野共和国を併合し、 かつての共和制三壁を南北国境をわずか数ヶ月で再建してしまった。 残るは東西、東に東安の奪った11区と12区、西には首都に隣接する西石野。 この対外戦争の準備中、初代皇帝が暗殺された。

暗殺はすぐに東安商人の差し金と判明し、東安と開戦するも戦線は膠着し、 両国ともに疲弊し、講和した。講和で下街を放棄した事に不満が高まり、各地で講和反対の火が上がった。 また戦時中に臨時執政官が独断で首都を南遷し、 北三壁は戦乱にこそ巻き込まれなかったものの荒廃が更に進み、外街10区の人口は百人を下った。 一方で南三壁では中央政府の遷都により自治権を奪われ、 また北三壁の統治が困難となった事による重税に下街の放棄を原因として、 城を追い出された旧三壁公爵らが蜂起し、中央政府の主要人物を牢に繋いだ。 下街では東安による開発が行われるも、殆どが資源目的のもので、 採鉱が終了すると穴だらけの無人区となった。 北三壁では無政府状態となり、更に殆ど無人になったため、 石野共和国が再独立を果たした。 南三壁では三壁公国が復活し、「中三壁」にあたる外街7区周辺の調査を行った。 旧北三壁市民の多くは外街5区に移住したため、平屋しか無かった外街5区では再開発が始まった。 公国では外街7区への再居住が進められ、 三壁帝国の侵略未遂で停止していた西石野の開発が再開された。 ついでに北三壁へ調査に向かわせると、数人程度の住民が残っていた。 住民はかつての住処に住んでいたが、 市街は数度の混乱で荒れ果てていた。とはいえまだ住める状況だったとか。

西石野の開発中に「森の民」と「西の民」が侵入し、 砦に籠った開拓者らが援軍を要請してきた。 労働力不足を補うため、「かつて先住民だったが三壁に追い出され、戻ってきた」 この2民族を傘下に入れ、西森辺境伯を設置。直轄から先住民自治に移管。 東安は北三壁への植民を計画。三壁-東安の水路地帯を小麦道県と名付けて支配。 月都-東安の通商路として外街1区から上街を経由する道路を整備。 「湿地の民」が東安の更に東から来襲。東安帝国は東方3県を失ったと報告。 旧三壁市内での東安の支配体制が揺らぐ。 東安城が「湿地の民」に包囲され連絡不通に。 同時期、西森辺境伯領の独立を承認、西森共和国が成立した。 そして月都系諸国でサミットを開いた。 議長国に月都帝国、参加国として三壁公国と西森共和国。 今後の世界統治について、商業主義路線で連携する事に合意した。 「湿地の民」が小麦道にも侵入し、東安の西方3県も平定。本土のみが残る。 北三壁に「湿地の民」が侵入、壁内への侵入に混乱。壁内の地価が暴落した。 更に東安の統治地域が全て「湿地の民」に制圧され、亡命者がなだれ込んできた。 各国と連絡を取ろうと試みるも、防衛線維持で手一杯に。 すると、西森共和国より急使が来訪した。 石野共和国が滅亡し、北石野の亡命政権が救援を求めているらしい。 ここまで追い込まれれば仕方ない。 封印せし武器庫を解放せよ! 旧世界連合でこの新たな敵を叩かねば。 そして海底回廊内の大広間に全国の代表を集め、完全兵装を配った。 但し北石野亡命政権のみは招けなかったが。 参加国は三壁公国に西森共和国、東安帝国であった。 作戦としては、まず三壁と東安、そして月都を繋ぐ要衝の金台地区を奪還し、 そして公国軍と東安軍は壁内と石野を奪回し、 同時に金台大橋を渡った無傷の月都軍が「湿地の民」の本拠を叩くのだ。 外街6区に西方軍司令、金台に東方軍司令を置き、護国戦争が始まった。

東方軍、つまりは月都軍はまず橋を渡らねばならない。 しかしこの橋も占拠されている。橋の途中には守備兵が数人ずつ立っている。 1度救援を呼ばれれば、東詰には大軍が押し寄せるだろう。 ならば東詰を先に占拠するしかない。 東安南端から南に300ブロックの彼方で、 敵海軍の脆弱な事を祈りつつ、船で挑むのだ。 橋から見えぬ距離で護送船団方式で航行し、 東詰から更に南50ブロックほどの所まで近付いて上陸した。 海上では月都のテオドシウス港からの200艇が、開封港からの200艇と激突した。 丁度あの海底回廊の直上あたりだろう。 弓矢戦の後は橋を挟んだ戦いとなり、剣戟戦となったために 完全兵装のこちらが勝利した。 兵数300で東詰を奪い、砦を築く。耐えている間に輸送を行い、砦から打って出る作戦だ。 東詰の防御は極めて脆弱で、全員を捕虜化できたため、急ぐ必要はなかった。 敵兵の中には橋の存在を知らぬ者も居て、重要性が分かっていない模様だ。 というか、山を越えて東安陥落を待っている軍勢にとってはさほど重要ではないらしい。 捕虜を見ても、「湿地の民」の強さはどこにあるのか。全く分からない。 遠征中にも関わらず急使がやってきた。よほどの事なのだろうと思えば、 三壁が南北どころか3つに分かれたらしい。 「湿地の民」率いる北三壁帝国と、そこからの亡命者の正統三壁帝国が乱立したという。 「湿地の民」の侵入の目的はこれか。そう思いつつも東安の後詰め決戦に向かう。 東安帝国の旧領であるアレクサンドリア州に進入する。 元から人の少ない地ではあったが、無人になっている。亡命者はどこに行ったのか。 それとも全員敵軍に捕まったのか。不気味ではあるが、どちらにせよ休息が必要だ。 仮の小屋を大量に建設し、休息を行う。やはり未開発の森林地帯は物資に困らない。 「湿地の民」は沿岸部を占拠していったらしく、旧東安領でも少し内陸に進むと敵はいない。 とはいっても今のうちに、なるべく南岸の方に、 橋が奪還されても大丈夫なように港を整備しておく必要がある。 そのため、別働隊を南岸方面に向かわせ、南岸港の建設にあたらせた。 そして本隊はいよいよ開封市の南の湖まで辿りついた。 この湖は海や川と接続したため、今では厳密には運河であるが。 開封市は城壁が未発達で、宮殿ですら建っていないため、平地といった方がよい。 東安をかつて解放した時には、そうであった。 しかし敵は流石「湿地の民」、利用価値が分かったのだろう、商業拠点となっていた。 これは護国会議の際には全くの予想外であった。 しかし今、湖を越えればそこには都市がある。 そしてこの湖を通る船は多く、まともには勝ち目がない。 この完全兵装をもってしても、敵軍の得意とする戦場で、 敵についての情報のないまま戦うのは危険すぎる。 ならば陸上で戦わせるまで。

開封市の東には川がある。その東の台地に陣を張る。 敢えてここを襲わせる、偽の本陣である。 実際に小屋に松明を立て、ここを中心に動く。 そして敵が八重垣を越えてここを落とした時、 こちらは手薄な開封市を落とすという算段だ。 一方で壁内の方では、正統三壁帝国が北に吸収されたとか。 西方軍は外街8区まで押し返したが、戦線が膠着したらしい。 また北石野は脱出後に陥落し、亡命政府が壁内に移ったとか。 あまり詳しい事が伝わってこないあたり、2戦場が離れすぎた結果だろうか。 そして敵軍が偽の本陣を取り囲んだ。今しかない。 いくら空堀を巡らせ、入口さえ潰したとはいえ、 砦内からの攻撃がないのならすぐに落とすだろう。 開封市内に一斉に侵入すると、市民とも戦闘になる。 向こうにとっては都市を見つけて住み着いているのだ。 ここの陥落は住居を失うのと同じ。ならば。 降伏すれば住居は与える。 こうすれば問題はないはず。 東安の領内だが、どうにかなるだろう。 こうして開封市を平定した。 西方軍は弩兵隊を駆使して戦っているとか。 どうやら「湿地の民」は陸上での集団戦闘が不得手らしい。

今度は南から報告が来た。港と道路の建設が終わったとの事。 また報告だ。石野旧領に石野王国が建国されたとか。 勿論、北三壁帝国の属国らしいが。 北三壁帝国軍と西方軍が外街9区で激突し、 完全兵装のこちらにも死者が出たとか。 幸いにも兵装は回収できたらしいが、 激化してくるといずれ兵装を奪われる日がやってくる可能性がある。 その前に敵軍の強さを分析せねば。 そして東安城を解放せねば。 物資輸送は海底回廊から安定的に行えるものの、 いつ城壁が破られるかも分からない。 東安が落ちれば戦線崩壊である。 幾ら一度も侵入を許したことのない月都本土でも、 「湿地の民」の手に掛かれば籠城戦に追い込まれるだろう。 宮殿や住居のある高山はすぐに落とされるだろう。 そうすれば旧世界たる我々は終わりだ。 であるから、最後の砦である東安の後詰めに駆け付け、 勝利せねばならない。 開封まで来れば、東安は目と鼻の先。 決戦の地は開封市街。市民には月都への移転を促した。 しかしここに思わぬ敵がやってきた。 それは東からの「湿地の民」だった。

東からの「湿地の民」、尤も彼等は「南湿地の民」と名乗っていたが。 つまり今決戦をすれば、東安を包囲する「北湿地の民」と バビロン州から来る「南湿地の民」に挟撃されるのだ。 これまで侵攻を行ってきたのは「北湿地の民」らしい。 兵力不明の「南」を相手取ってはいけない。 直感的にそう思い、開封から撤退し、アレクサンドリア州まで戻った。 旧東安領は東安の東隣に東州、その南に開封市、その東がバビロン州で、 開封市の南がアレクサンドリア州である。 この「南」をどうにかやり過ごす方法はないか。 「南」と敢えて名乗っているという事は、「北」からの独立性を主張しているという事。 つまりこの2勢力は対立し得るという事だ。 早速「南」に使者を飛ばした。協力要請だ。 条件として住宅を要求されたが、開封への集住を許可すると、「湿地の民」の南北戦争が始まった。 南北ともに湖で戦ったため、こちらから見て左側が敵、右側が「南」だった。 結果はこれまで戦力を温存していた「南」の勝利で、 更に追加で「北」の本拠地への攻撃を共同作戦として行う事とした。 本拠地を失えば攻撃は止むはず。 そう信じて、「北湿地」への攻撃が始まった。

「北湿地」には、バビロン州にある東西の川を遡上すると行けるらしい。 そして「南湿地」の軍隊とともに「北湿地」へ向かう。 まだ見ぬ世界である。川を上ると、小屋や木々が所々にある。 その全てを焼き払い、水路網を破壊する。 二度と街を攻められぬように、湿地と小川の間に10ブロック程度の盛り土をした。 二度と船を造れぬように、木という木を焼き払い切り倒し、 二度と軍を出せぬように、湿地を完全に封鎖した。 そして巨大な地下牢を建設した。 敵軍捕虜をここに収容するためだ。 勿論湿地であるため、水牢にもなっている。 西方軍がどうやら勝ったらしい。 撤退してくる「北湿地の民」を発見した。 それら全てを捕虜化し、深さ50ブロックの地下牢に入れた。 これで戦争は終わった。護国戦争は旧世界軍の勝利に終わったのだ。

全軍が撤退し、元に戻ったのはそれから1週間経った頃だった。 物的損害は北三壁の廃墟群程度に抑えられた。 人的損害はリスポーン中に殺された者がいないためゼロ。 というか、リスポーン中に殺されたら復活できないのは初めて知ったのだが。 壁内はやはり3つに分かれたままらしく、三壁公国が統一したはずだったが、 北や中央部にはまだ帝国の残滓があるらしく、三壁連邦として 3国分治という形を取った。 北の北三壁国。中央部の正統三壁帝国。そして南の三壁公国。 一方で西森共和国は護国戦争中に本土侵攻を受け、 月都帝国との同君連合を所望し、同君連合化した。 そして東安帝国は領土再編により、 未確定だった領土の多くを確定させたため、 壁内植民地3県の1つで、係争の種となっていた下街区を返還した。 残る2県の外街11区と12区は返還されなかった。 護国戦争の結果として、月都・東安・三壁の三国での防衛協定が締結された。 商都高山は月都帝国の繁栄を物語るかのような大都市となった。 しかしそれを聞きつけたか、攻め込もうとする者が現れた。

彼等は「雪原の民」と名付けられた。 西の民の原住地よりも南の、無主の地の先住民だとか。 そして護国戦争で月都帝国の目が東に向いている間に、 高山の西200ブロックに都市を見つけ、そこに定住したのだという。 あれはペテルブルクをモデルに造った都市、湯岐市だ。 雪原の中にクォーツで建てたせいで見つけにくかったのだ。 というか、自分もてっきり忘れていた。 せいぜいミニ・ミハイロフスキー城を建てた程度だったから。 兎に角そこが敵の橋頭堡なら、そこを叩かねばならない。 そう考えていると急報が届いた。 「雪原の民」が西森と本土の間の海峡部にある砂岩の都市・砂山市を占拠し、 そこを拠点に海賊行為を働こうとしているらしい。 すぐさま西森・月都連合軍がそこを陥落させると、 「雪原の民」が反撃として高山西の畑を包囲したのだ。 月都帝国軍は湯岐市攻略に向けて進軍し、 完全兵装で攻囲戦に勝利した。 しかしこの攻囲戦は実質向こうが打って出た白兵戦であり、 そうならなければ間違いなく長期戦であった。 この事は創立期の者にしか分からないだろう違いだろうけれども、 間違いなく敵が強くなっているのだ。 かつては鉄兵装だった外敵が、今ではダイヤ兵装である。 もう「完全兵装」でさえ完全でなくなりつつあるのだ。 武器特化の時代が限界を迎えつつある。 そろそろ新戦術を取らねば。この危機感は一部の者には伝わったようだ。

「雪原の民」を湯岐市から放逐し、海峡の向こう側へと遠征に向かった。 目指すは奴等の本拠。そこまでに補給地は一切無い。 つまり基地を作りながら攻め込み、 破壊が終われば資材を撤収しながら戻らねばならないのだ。 それができれば暫くは攻めてこない。 途上に雪原県を設置しながら、本拠へ進軍する。 結局行き着いた本拠地は高山市から西に1000ブロック彼方。 よくこんな所から攻撃してきたものだ。 村や木々に火を放ち、首領と思しき者を拿捕する。 また1人も逃がさぬよう村を包囲し、連行する。 こうして本拠地を徹底破壊した上に連行まで行えば、 再起を図る事はないだろう。 そして奴隷市場のある北三壁に送り、徹底的に分断する。 ついでに、「湯岐市」は「雪花市」に改名した。 これは高山の南の島々の先住民への政策とは対照的だっただろう。 都南県を設置した際には、先住民を高山に招きいれ、 そして開発援助まで行ったというのに。 帝政西森では石野を併合し、更に森の民が逃れていた森山まで進出し、 同君連合は旧三壁植民地を上回る領土を手にした。 三壁公国は北に進軍し、正統三壁帝国の内部紛争に介入し、遂に併合した。 そして北三壁国が東安の植民地2県を奪回したと見るやいなや、 更に北に進軍して北三壁国ごと併合した。 この働きにより、三壁を公国から王国に昇格させるほどだった。 東安帝国は壁内領土を喪失したが、かつて侵攻した「北湿地の民」を 併合して北湿地を手に入れたとか。 しかし「南湿地の民」がバビロン州の城壁を突破し、 その上石野を併合した西森の三壁との同盟により 三壁への穀物輸出が再開し、東安は財政危機に陥ったらしい。 こうして「南湿地の民」の侵攻と開封蜂起により東安が東植民地を失った。 そして「南湿地の民」がアレクサンドリア州の南の南海県に攻め込んできたため、 月都軍が打ち破って奴隷化し、北三壁に売り飛ばしたとか。 そんな噂を聞くが、実際は「南湿地」の流した流言(デマ)だ。 「南湿地」は東安を包囲し、この機に新王朝を建てるつもりらしい。

しかしこちらとしては、友好国の東安第1王朝に倒れられては困るのである。 東安は史上最大の防衛戦を強いられ、 例のように全ての外地を占領され、籠城戦となっていた。 第1次包囲をあの「魔獣(モンスター)戦線」、 第2次包囲を「北湿地」とすると、今回が第3次包囲だろうか。 東安は西方の三壁や月都本土と、 「湿地」や開封のある東方を結ぶ最重要要衝なのだ。 欧亜でいえばまさにコンスタンティノープルである。 そして「南湿地」は東安の堅牢な城壁を破るための 様々な兵器や戦術を投入した。 坑道や砲撃といったものであった。 新世界と旧世界の最終戦争。 東安が落ちれば、傀儡の三壁と月都本国のみが残る。 そうなればいずれ狙われるのは確実。 今は「完全兵装」が通じるが、いずれは陳腐化するだろう。 そうなった時、我が国は座して死を待たざるを得ない事となる。 ならば東安を守る形で交渉せねば。 しかし「南湿地」の突きつけてきた講和条件は あまりに承服できかねるものだった。 東安王朝を維持する代わり、東安を開城する。 旧世界での非戦のため、両国が武器の一切を放棄する。 この2条件のうち片方でも呑もうものなら、 我が国が講和に応じる意味はなくなる。 ではこの最終戦争に勝利する他、方法はない。 こうして最終戦争が開戦したのだった。

この戦争の最低目標は東安の後詰め決戦勝利。 最高目標は「南湿地」の滅亡。 まずは本隊と包囲隊を切り離すところからせねば。 本隊は東安の東にある岩山に。 包囲隊は東安を包む形で、海側にもいる。 これまでの包囲よりも厳しい包囲だ。 幸いにして海底回廊は無事だが、海側はかなり攻撃を受けたらしい。 敵本隊を引き離すには、やはりこちらの本隊しかないだろう。 とはいっても兵は少数。これではまだ「完全兵装」を失うリスクが高い。 ならばバビロン州に未だにいる化け物(モンスター)どもを使えば。 奴等は数を追いかける傾向がある。つまり両方同じだ。 大勢が動けば、もう1つの大勢も動く。 敵本隊を少しでも岩山から下ろせれば、 あとはモンスターどもにお任せだ。 両方が消耗戦を展開して、どちらかが全滅するだろう。 奴等は撤退を知らない。いつまでも戦い続けるから。 手初めにモンスターどもを誘き出し、 自らは川に潜って逃れつつ岩山に近付ける。 現実世界では泳げなかったが。そこは良いとして、 「モンスターどもの急襲」を見た敵軍はそれを討伐せんと兵を差し向ける。 これを見たモンスターどもは更に数が増え…という算段だ。 敵本隊は崖にてモンスターと一戦交え、薄勝を掴んだ。 しかし総数は激減し、その分はやはり包囲軍から充当された。 本陣を奇襲から守るためとはいえ、兵数の激減した東側では 東安軍が敵の殲滅を目指して矢の雨を降らせ、敵を全滅させた。 結果、完全兵装隊の軍事介入をチラつかせると、 敵軍は撤退し、全植民地を返還する代わりに不可侵条約を締結。 かなりの譲歩を引き出した。

こうして最終戦争はほぼ勝利に終わったが、 東安は小麦道の衰退に伴い産業構造の転換を求められ、 陸路の交易路拡大に勤しんだらしい。 バビロンに残されたモンスターらはこの際討伐され、 東安はその戦利品などを販売した。 帝政西森は更に西進し、南西森県と西域県を設置。 これにより月都系3国の合計領域は旧三壁を上回る。 拿捕した首領から、「雪原の民」よりも更に遠くに異民族が複数居る事を確認。 この異民族との共存共栄を図るため、辺境県に交易路整備を命じる。 東安帝国が大探検を実施、東方1000ブロック先まで探索し、 発見した異民族に移住を提案し成功。 月都・西森がそれぞれ大探検を実施、月都は南洋3000ブロックを探検し、 南に大陸が広がっている可能性を発見。西森は西方2000ブロックと北方1000ブロックを探検し、 更に北方探検隊は北端で東に折り返して更に南下し、東安までの帰還を実現した。 こうして旧世界は、外側に広がる新世界との共存共栄を図りつつ、 経済活動を行うのであった。

私が月都帝国の外交を行う一方で、 美子は他の部面を担ってくれていた。 いや、押し付けていたといった方が正しいか。 月都帝国は数度の戦争で何度か崩壊しかけている。 これを取りまとめてくれていたのが美子だった。 月都の最初の対外戦争である三壁戦争では、 北征軍に取り残された千余人が高山に居た。 戦線の拡大につれて銃後の負担は増していき、 兵站線に立つ補給物資輸送員の総数は数百を下らなかった。 これで税金でも課していれば間違いなく崩壊していたという状況。 しかし美子の提案による征服地での農地開拓が、 我が国の「収奪なき戦線拡大」を可能にした。 高山から運んでいれば輸送負担が凄まじいものだが、 戦地の背後で農地を開拓してしまえば、輸送は皆無に等しい。 この政策は月都軍の不敗の完全兵装によって可能となったとはいえ、 戦後にも好影響を残したのだ。 南三壁独立時の食糧自給率上昇に作用し、 月都が南側から支持される主要な要因となったのだ。 「湿地」との戦争では、占領された地へ密使を派遣し、 各地でパルチザンを結成させ撹乱する事で 海底の盟まで北部戦線を維持し、 護国戦争では高山市長官も西方総司令と兼任して混乱を抑え、 戦後まもない「雪原の民」の来襲時も籠城戦で耐え抜いて 高山と高山にある全ての人民と財産を守った。 いつしか美子は月都の副帝や守護神とまで言われるようになった。

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