Tosastudy-japa
1.現文単語
単語 | 読み | 意味 |
アナログ | あ | 情報を連続的に変化するもので表すこと。 |
デジタル | で | 情報を数字や文字などの信号によって表すこと。 |
命題 | め | ①真偽を判定できる文。 ②課せられた課題。 |
敷衍 | ふ | ①おし広げて説明すること。 ②例などをあげて,わかりやすく説明すること。 |
規範 | き | 社会や集団のなかで行動する際に従うべき基準。 |
倫理 | り | ①社会や共同体の中で従うべき道理。 ②よりよく生きるための内面的な規範。 |
エートス | え | ①慣習。習俗。 ②ある社会や文化に共有されている気風や精神性。 |
ジレンマ | じ | 相反する二つの事柄の板挟みになっている状態。 |
イデオロギー | い | ①政治や社会のあるべき姿についての信条や思想。 ②自らの立場を正当化するための思想。 |
フェティシズム (物神崇拝) |
ふ | ①特定のものに極度の愛着を示すこと。 ②人間みずからがつくりだした商品や貨幣を,それ自体価値のあるものとしてあがめること。 |
自己 | じ | 自分によって把握された自分自身。 |
他者 | た | 自分とは異なる存在。自分の理解が及ばない存在。 |
自我 | じ | 他者と区別して意識される自分。 |
近代的自我 | き | 近代社会の自由を背景に意識される自分。 |
アイデンティティ (自己同一性) |
あ | ①自分が自分であると確信すること。 ②帰属意識。 ③他とは区別された独自性。 |
主体 | し | 行為をおこなうもの。作用・動作を及ぼす側。 |
主観 | し | ①外界に対する主体の意識。 ②自分だけの考えや感じ方。 |
客体 | き | 主体の行為の対象となるもの。作用・動作を及ぼされる側。 |
客観 | き | ①主観の認識の対象となるもの。 ②誰にとっても<同じように認識される考えや感じ方。 |
理性 | り | 感覚や感情に頼らず,論理的に物事を考える能力 |
感性 | か | ①外からの刺激を感覚的に受け取る能力。 ②感受性。 |
ロゴス | ろ | 言葉・論理・理性・比例などの意味をもつギリシア語。 |
パトス | ぱ | 受動・受苦・情熱などの意味をもつギリシア語。 |
実体 | じ | ①事物の正体。そのものの本当の姿。 ②他の影響を受けず,それ自体で存在するもの。 |
物心二元論 (心身二元論) |
ぶ | 精神と物体(身体)は別物だという考え方。 |
実体 | じ | ①事物の正体。そのものの本当の姿。 ②他の影響を受けず,それ自体で存在するもの。 |
物心二元論 (心身二元論) |
ぶ | 精神と物体(身体)は別物だという考え方。 |
独我論 | ど | 自分の自我だけが存在し,他人や外界は自己の意識のなかだけの存在にすぎないとする考え方。 |
間主観性 (共同主観性) |
あ | 自分も他者も同じ世界を経験しているに違いない,という私の確信。 |
身体 | し | からだ。近代哲学では物体と同様に軽視され,精神と中立的に語られる。 |
間身体性 | あ | 複数の人間の身体感覚が相互に浸透しあうこと。 |
自由意志 | じ | 他から強制されることなく,自分の行動を自覚的に決定できる意志。 |
決定論 | け | 人間の行為も含めて,世界に起こる出来事はすべてあらかじめ決定されているという考え方。 |
責任 | せ | ①自分がしなればならない任務。 ②ある行為の結果として負わなくてはならない不利益や責め。 |
実存 | じ | ①現実に存在すること。 ②人間の個別具体的なあり方。 |
実存主義 | じ | 実存の内実を探求する思想。 |
構造主義 | こ | 構造やシステムの分析を通じて,人間に関するさまざまな事象を明らかにしようとする思想。 |
歴史 | れ | 現在から意味付けられた過去の事実。 |
時間論 | じ | 「時間とは何か」に関する議論や考察。 |
想起 | そ | 過去の出来事を思い起こすこと。 |
実在 | し | ①実際に存在すること。 ②意識から独立して、客観的に存在すること。 |
イデア | い | 理性によって捉えられる永遠不変の実在。理念。 |
形而上 | け | 形を持たない、抽象的・観念的なもの。 |
形而下 | け | 形のある具体的・感覚的なもの |
ア・プリオリ | あ | ①経験に先立っていること。 ②根拠を欠いていること。 |
ア・ポステリオリ | あ | 経験によって得られること。 |
唯心論 | ゆ | 万物の本質は精神にあるとする哲学的立場。 |
唯物論 | ゆ | 万物の本質は物質であるとして、精神や意識も物質からできていると考える哲学的立場。 |
弁証法 | へ | 矛盾する事柄を、統一・総合することによって、高い次元の結論へと導く思考方法。 |
止揚 | し | 矛盾する二つの事柄を統合すること。 |
記号 | き | 一定の意味を指し示すもの。 |
恣意性 | し | 言葉と意味との間には必然的な結びつきがないこと。 |
分節 | ふ | 切れ目を入れて分けること。 |
テクスト | て | ①言語によって書かれたもの。 ②記号として解釈できる現象。 |
コンテクスト | こ | 文脈・前後関係。 |
表象 | ひ | ①心に思い浮かべるイメージ ②表現すること。表現されたもの。 |
レトリック | れ | 文章表現の効果を高めるための技術。 |
メタファー | め | たとえであることが明示されていない比喩。 |
オリジナル | お | ①(複製や模造品に対して)原物・原作・原曲。 ②独創的であること。 |
コピー | こ | 原形を模して作られたもの。写し・模造品。 |
アウラ | あ | ①人・物が発する独特な雰囲気。 ②「今」 |
シミュラークル | し | オリジナルとコピーの区別が失われているようなあり方。 |
神話 | し | ①世界の創造や文化の起源を神々にかこつけて説明する物語。 ②根拠がないのに絶対的なものだと信じこまされている事柄。 |
虚構 | き | ①事実ではないものを事実らしく仕組むこと。 ②架空の出来事を描いた創作物全般。 |
コスモス | こ | 規則や順序がある整然とした状態。 |
カオス | か | ①さまざまな要素が入り混じってまとまりがない状態。 ②神話で、天と地がまだ分かれていない状態。 |
コスモロジー | こ | ①宇宙論。 ②根源的な世界観。 |
文化 | ふ | 民族・地域・社会などで作り出され、その中で共有されている行動様式や生活様式。精神的な所産という意味合いが強い。 |
文明 | ふ | 文化が拡大し、高度な社会制度や技術を備えた状態。物質的な所産という意味合いが強い。 |
西欧中心主義 | せ | ヨーロッパこそ最も文化的に進歩した地域だとする考え方。 |
2.古文単語
単語 | 意味 |
おぼえ | 評判・人望 寵愛・信任 自信 |
ひま | 合間・隙間 絶え間 時間のゆとり 機会 |
いとま | 暇・余裕 休み・休暇 別れ・離別 離婚 |
ざえ | 学問・学才 芸能・技能 |
よろこび | 喜び・祝い事 昇進・昇進のお礼 |
こころばへ | 気立て・心の様子 趣向・趣・風情 趣意・意味 |
こころづくし | 色々と物思いすること 気をもむこと |
ここ | 私・貴方 |
そこ | 貴方(其方) |
かれ | あの人・あれ |
それ | その人・貴方 |
これ | この人・貴方・私 |
あなた | あちら・向こう |
そなた | そちら・貴方 |
こなた | こちら・私 |
そのかみ | その当時 過去・昔 |
せうと | 兄・弟 |
おとうと おとと |
弟・妹 |
いも | 妻・恋人・姉・妹 (愛しい女性) |
つま | 夫・妻 |
はらから | 同母兄弟・同母姉妹 (またはただの兄弟姉妹) |
かたへ | 片側 一部分 傍ら・側 仲間 |
ほど | 限度・様子・有様 頃・折・時分 広さ・距離 身分・年齢 |
かぎり | 限度・限界 極限 終わり・臨終 程・間・内 あるだけ 機会 |
きは | 端 境目・境界 限り・辺り 家柄・身分 程・程度 |
ついで | 物事の順序・次第 折・機会 |
沙汰 | 処置・始末 評議・評定 命令・指図 |
とが | 過ち・過失 欠点・短所 |
け(故) | ~ため・~せい |
よし | 物事のいわれ・由緒 理由・訳 手段・方法 |
よう | 様子・有様 理由・訳 方法・手段 |
ちぎり | 約束・前世からの約束 因縁 |
ほだし | 障害物 |
あやめ | 模様 区別 筋道・道理・分別 |
うつつ | 生きている状態 現実 正気 夢心地 |
あるじ | 主人 饗応・御馳走 |
ふるさと | 古都・廃都 生まれ故郷 古なじみの地 |
さて | そのまま その他に ところで・それ故 それにしても |
さながら | そのまま 全て・残らず 全然 |
いま | すぐに・只今 間もなく・やがて 更に・もう |
せめて | 努めて・無理に・強いて 非常に・甚だしく・極めて |
うべ(むべ・宣) | 尤もな事に・なるほど |
かつ | 一方では~他方では~ すぐに |
ひねもす | 朝から晩まで・一日中 |
かまへて | 是非とも・何とかして 必ず・きっと |
あへて | 押し切って・無理に |
かけても | 少しでも 全く~ない |
さだめて | きっと~だろう・必ず~だろう |
3.古文例文
花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは。雨に向かひて月を恋ひ、たれこめて春の行方知らぬも、なほあはれに情け深し。咲きぬべきほどの梢、散りしをれたる庭などこそ、見どころ多けれ。歌の詞書にも、「花見にまかれりけるに、早く散り過ぎにければ。」とも、「さはることありて、まからで。」なども書けるは、「花を見て。」と言へるに劣れることかは。花の散り、月の傾くを慕ふならひはさることなれど、ことにかたくななる人ぞ、「この枝、かの枝、散りにけり。今は見どころなし。」などは言ふめる。
(桜の)花は満開であるのだけを、月は満ちているのだけを見るものだろうか、いやそうではない。雨を見ながら月を恋しく思い、簾を垂れて中に閉じこもって春の過ぎていく先を知らないのも、やはりしみじみと情趣が深いのである。今にも咲きそうな桜の梢、花が散りしおれている庭などこそは、見るべき点が多い。和歌の詞書にも、「花見に行った時、すっかり散っていたところ」とか、「さしつかえることがあって行けなかった」などとも書いてあるのは、「花を見て」と言っているのに比べて劣っているだろうか、いや劣らない。花が散り、月が西に傾くのを惜しんで慕うなら私は、言うまでもない事だが、特に情趣を解さない人が「この枝もあの枝も散ってしまった。今は見る所がない。」などと言うことよ。
よろづのことも、初め終はりこそをかしけれ。男・女の情けも、ひとへにあひ見るをば言ふものかは。あはでやみにし憂さを思ひ、あだなる契りをかこち、長き夜をひとり明かし、遠き雲居を思ひやり、浅茅が宿に昔をしのぶこそ、色好むとは言はめ。
全ての物事も、始めと終わりにこそ素晴らしい。男女の恋情にしても、ただ逢って契りを結ぶのだけを言うものだろうか、いや違う。逢わないで終わってしまった恋の辛さを思い、はかない二人の約束事について愚痴をこぼし、長い夜をただ一人で過ごし、遠い空の彼方に分かれていった恋人を思いやって、浅茅の茂る荒れた家で、昔を思い出すような人こそが、恋の情趣を解するものと言われる。
望月のくまなきを千里のほかまで眺めたるよりも、暁近くなりて待ち出でたるが、いと心深う、青みたるやうにて、深き山の杉の梢に見えたる、木の間の影、うちしぐれたるむら雲隠れのほど、またなくあはれなり。椎柴・白樫などの、ぬれたるやうなる葉の上にきらめきたるこそ、身にしみて、心あらん友もがなと、都恋しうおぼゆれ。
月が欠けていないのを、遥か千里の彼方まで眺めているより、暁近くなって、漸く出てきた早朝の月が、大層趣深く、青みがかっているような色で、深山の杉の梢に見えている様、木の間越しの月光、時雨をもたらす群がった雲に隠れている様子などは、この上なく興趣があって心に深く感じられる。椎の木あ白樺などの濡れているような光沢のある葉の上に水滴がきらめいている時などは、身に染みて、情趣を解するような友があれば良いのに、と都が恋しく思われる。
すべて、月・花をば、さのみ目にて見るものかは。春は家を立ち去らでも、月の夜は閨の内ながらも思へるこそ、いとたのもしう、をかしけれ。よき人は、ひとへに好けるさまにも見えず、興ずるさまもなほざりなり。片田舎の人こそ、色濃くよろづはもて興ずれ。花のもとには、ねぢ寄り立ち寄り、あからめもせずまもりて、酒飲み、連歌して、果ては、大きなる枝、心なく折り取りぬ。泉には手・足さしひたして、雪には下り立ちて跡つけなど、よろづのもの、よそながら見ることなし。
総じて、月や花を、そのような視点だけで見るものだろうか、いや違う。春は家の内に居ながらでも人を恋しく思い、夏の月の夜は寝室に居るままでも月を思い描いているのこそ、大層期待が持てて、趣がある。高貴な人はただ只管に風流の道に打ち込んでいるように見えず、面白がる有様もはっきりしている。片田舎の人こそ、しつこく、万事に面白がるものだ。花の木の下に、無理に近寄り立ち寄り、脇見もしないで花を見つめて、酒を飲んだ連歌をしたり、終いには大きな枝を無情にも折り取ってしまう。泉には手や足を浸し、雪の上には降り立って足跡を付けるなど、何事につけても、距離を置いて見ることがない。
若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る (山部赤人)
若の浦に潮が満ちてくると干潟が無くなるので、葦辺に向かって鶴が鳴いて渡っていく。
わが妻はいたく恋ひらし飲む水に影さへ見えてよに忘られず (防人歌)
私の妻はとても恋しいらしい。飲む水に妻の姿すら映って見えて全く忘れられない。
二条后の春宮の御息所と申しける時に、
御屏風に龍田川に紅葉流れたる形を書けりけるを題にてよめる <秋>
もみぢ葉の流れてとまる水門には紅深き波や立つらむ (素性)
二条の后がまだ春宮の生母である御息所と申しました時に、
御屏風に龍田川に紅葉が流れている絵を描いていたのを題にして詠んだ歌。
紅葉の葉が流れて止まる水門には紅色深い波が立つだろうか
来べきほど時過ぎぬれや待ちわびて鳴くなる声の人をとよむる (藤原敏行)
ホトトギスが来る筈の時が過ぎてしまっただろうか。待ちくたびれた末に漸く鳴くような声が人をどよめかせるのは。
男に忘られてはべりけるころ、貴船に参りて、
御手洗川に蛍の飛びはべりけるを見てよめる <神祇>
もの思へば沢の蛍もわが身よりあくがれ出づる魂かとぞ見る (和泉式部)
男に忘れられておりました頃、貴船神社に参詣して
御手洗川に蛍が飛んでいましたのを見て詠んだ歌
物思いに耽っていると、沢の蛍も私の身から出てきた魂だろうかと見える。
摂政太政大臣の家に五首の歌よみはべりけるに <春>
またや見む交野のみ野の桜狩り花の雪散る春のあけぼの (藤原俊成)
摂政太政大臣の家で五首の歌を詠みました時に詠んだ歌
もう一度桜を見られるだろうか、いや見られないだろう。交野の御料地での桜狩、花が雪の如く散る春の夜明けの美しい景色を。
題知らず<冬>
さびしさに堪へたる人のまたもあれな庵ならべむ冬の山里 (西行)
さびしさに耐えている人が私とは別にいれば良いのに。そうすればその人と庵を並べよう、この冬の山里で。
4.漢文単語
単語 | 意味 |
字 | あざな 元服の時に本名(諱)とは別につける呼び名 |
海内 | かいだい 国内,天下 |
寡人 | かじん(⇔対義語:朕) 王侯の自称,謙称。代用皇帝語は朕 |
干戈 | かんか 武器,戦争 |
諫言 | かんげん 王など目上の人の間違いや過ちを諌めること |
奇才 | きさい 優れた才能,優れた人物 |
期年 | きねん まる一年,一周年 |
堯舜 | ぎょうしゅん 中国古代の伝説上の聖天子。(堯と舜) |
郷党 | きょうとう 村里・村 |
君子 | くんし 人徳の優れた立派な人。 |
桀紂 | けっちゅう 夏王・桀と殷王・紂のこと。暴君の代名詞。 |
乾坤 | けんこん 天地。「乾坤一擲」など。 |
胡 | こ 中国北西の異民族。「胡人」はソグド人。 |
光陰 | こういん 時間・歳月・月日。「一寸の光陰軽んずべからず」。 |
江河 | こうが 長江と黄河。巨大河川。 |
古人 | こじん 昔の人。亡くなっている人。 |
故人 | こじん 旧友。昔馴染。 |
左右 | さゆう 側近の臣。近臣。 |
子 | し あなた。先生。 |
士 | し 卿・大夫に次ぐ官吏。学徳のある立派な人物。武士。 |
師 | し 軍隊・都。先生・手本。 |
社稷 | しゃしょく 国家。土地神と五穀の神。 |
豎子 | じゅし 幼児・子供・童僕・小僧。 |
須臾 | しゅゆ ほんの短い間。僅かな時間。暫く。 |
書 | しょ 手紙・書物。 |
城 | じょう 城壁をめぐらした市内。「城市」。 |
小人 | しょうじん 人格の低いつまらぬ人間。身分の低い者。 |
大人 | だいじん 徳のある優れた人。 |
丈夫 | じょうぶ 一人前の立派な男。優れた立派な人物。 |
食客 | しょっかく 客分として抱えておく家来。居候。 |
信 | しん 嘘を吐かないこと。真実・誠実・正直。 |
仁 | じん 慈しみ。思いやり。愛。儒教の最高の徳目。 |
人間 | じんかん 人間の世界。世の中。世間、俗世界。 |
寸毫 | すんごう ほんの僅か。 |
聖人 | せいじん 最高の人徳を持った立派な人。 |
千乗国 | せんじょうのくに 戦車千台を出せる程の強国。 |
千里馬 | せんりのうま 一日に千里も走る駿馬・名馬。転じて俊才・有能な人材。 |
粟 | ぞく 穀物。 |
長者 | ちょうじゃ 年長者。目上・徳が高い人。富豪・権勢のある人。 |
天年 | てんねん 寿命・天寿。 |
南面 | なんめん 天子・天子の位。天子として政治をすること。 |
二三子 | にさんし おまえたち(師匠が弟子に対して呼ぶ語)。 |
白頭 | はくとう 白髪の頭。 |
匹夫 | ひっぷ 一人の男、身分の低い男。つまらぬ男。 |
為レ人 | ひととなり 人柄・性格。 |
百姓 | ひゃくせい 人民。万民。 |
布衣 | ふい 平民・無位無官の者。 |
夫子 | ふうし 先生。あなた。 |
不肖 | ふしょう 愚かなこと。自分の謙称。愚かな息子。 |
兵 | へい 武器・兵士・軍隊。戦争。 |
吏 | り 官吏・役人。 |
卒ス | しゅつす(しゅっす) 死ぬ |
5.漢文例文
項王軍壁垓下,兵少食尽,
項王の軍は垓下に籠城したが、兵は少なく食料も尽き、
漢軍及諸侯兵囲之数重。
漢と諸侯の軍は垓下を何重にも囲んでいる。
夜聞漢軍四面皆楚歌,
夜には周囲の漢軍から楚の歌が聞こえ、
項王乃大驚曰:
項王がとても驚いて言うには、
「漢皆已得楚乎?是何楚人之多也!」
漢は既に楚を得たのか?何と楚人の多いことか!
項王則夜起,飲帳中。
項王はそこで立って別れの宴会を開いた。
有美人名虞,常幸従;
妃が居た。名は虞と言い、いつも可愛がられ付き添っていた。
駿馬名騅,常騎之。
駿馬が居た。名は騅と言い、いつもこれに乗っていた。
於是項王乃悲歌慨,自為詩曰:
ここで項王は悲しんで歌(漢詩)を自ら作って詠んだ。
「力抜山兮気蓋世,
力は山を越え、気は世(=天下)を圧倒した。
時不利兮騅不逝。
運は味方せず、騅(=馬)はもう進まなかった。
騅不逝兮可奈何,
騅は動かずどうしようもない。
虞兮虞兮奈若何!」
虞よ虞よ君をどうすればよいのか!
歌数闋,美人和之。
数度復唱し、虞も共に歌った。
項王泣数行下,左右皆泣, 項王は数滴の涙を流し、重臣らも皆泣いた。
莫能仰視。
誰も顔を上げられなかった。
於是項王乃欲東渡烏江。
ここで項王は烏江(港)から東に渡ろうとした。
烏江亭長檥船待,謂項王曰:
烏江の亭長は船を停めて待って、項王に言った、
「江東雖小,地方千里,衆数十万人,
江東は小さいけれども、千里平方はあり、数十万の民が居ます。
亦足王也。願大王急渡。
また王に足る地です。大王よ急いで渡って下さい。
今独臣有船,漢軍至,無以渡。」
今私のみが船を持っています。漢軍が来ても、渡る術はありません。」※1
項王笑曰:「天之亡我,我何渡為!
項王が笑って言うには、「天が私を滅ぼすのだ、私が渡れるだろうか!
且籍与江東子弟八千人渡江而西,
かつ私は江東の若者8000人と長江を渡り西進した。
今無一人還,
今一人も帰ってきていない。
縦江東父兄憐而王我,我何面目見之?
喩え江東の者共が私を哀れんでも、何の面目があろうか?
縦彼不言,籍独不愧於心乎?」
喩え者共が言わずとも、私だけ恥じない事があろうか?」
乃謂亭長曰:
そして亭長に言うには、
「吾知公長者。
「私は君の高徳をよく知っている。
吾騎此馬五歳,
私がこの馬に乗って5年になる。
所当無敵,嘗一日行千里,
戦う所敵無く、一日に千里を走った事もある。
不忍殺之,以賜公。」
殺すに忍びないので、君に与えよう。
乃令騎皆下馬歩行,持短兵接戦。
残る騎兵に馬を下りさせ、短い武器を持って戦わせた。
独籍所殺漢軍数百人。
項王は漢軍数百人を1人で殺した。
項王身亦被十余創。
項王もまた十数ヶ所傷を負った。
顧見漢騎司馬呂馬童,曰:
漢の騎馬兵長の呂馬童を見て言うには、
「若非吾故人乎?」
「お前は我が旧友ではないか?」と。
馬童面之,指王翳曰:
呂馬童は顔を逸らし、王翳(軍の長)に指差して言うには、
「此項王也。」
「これが項王です。」と。
項王乃曰:
項王がこれを聞いて言うには、
「吾聞漢購我頭千金,
私は漢(劉邦)が我が首に千金(10億円くらい)と、
邑万戸,吾為若徳。」
一万戸の地を与えると聞いている。我が首は君のためにやろう。」と。
乃自刎而死。
そして項王は自ら首を刎ねて死んだ。
※1: そもそも烏江というのは図中南京の西あたり。そこから江東に至るには、南北幅20kmの長江を船無しで渡らねばならないが、これは不可能である。よって亭長は船のない状況では長江を渡れないと断言出来たのである。
原文のみ
項王軍壁垓下,兵少食尽,漢軍及諸侯兵囲之数重。夜聞漢軍四面皆楚歌,項王乃大驚曰:「漢皆已得楚乎?是何楚人之多也!」項王則夜起,飲帳中。有美人名虞,常幸従;駿馬名騅,常騎之。於是項王乃悲歌慨,自為詩曰:「力抜山兮気蓋世,時不利兮騅不逝。騅不逝兮可奈何,虞兮虞兮奈若何!」歌数闋,美人和之。項王泣数行下,左右皆泣,莫能仰視。
於是項王乃上馬騎,麾下壮士騎従者八百余人,直夜潰囲南出,馳走。平明,漢軍乃覚之,令騎将灌嬰以五千騎追之。項王渡淮,騎能属者百余人耳。項王至陰陵,迷失道,問一田父,田父紿曰「左」。左,乃陥大沢中。以故漢追及之。項王乃復引兵而東,至東城,乃有二十八騎。漢騎追者数千人。項王自度不得脱。謂其騎曰:「吾起兵至今八歳矣,身七十余戦,所当者破,所撃者服,未嘗敗北,遂覇有天下。然今卒困於此,此天之亡我,非戦之罪也。今日固決死,願為諸君快戦,必三勝之,為諸君潰囲,斬将,刈旗,令諸君知天亡我,非戦之罪也。」乃分其騎以為四隊,四向。漢軍囲之数重。項王謂其騎曰:「吾為公取彼一将。」令四面騎馳下,期山東為三処。於是項王大呼馳下,漢軍皆披靡,遂斬漢一将。是時,赤泉侯為騎将,追項王,項王瞋目而叱之,赤泉侯人馬俱驚,辟易数里与其騎会為三処。漢軍不知項王所在,乃分軍為三,復囲之。項王乃馳,復斬漢一都尉,殺数十百人,復聚其騎,亡其両騎耳。乃謂其騎曰:「何如?」騎皆伏曰:「如大王言。」
於是項王乃欲東渡烏江。烏江亭長檥船待,謂項王曰:「江東雖小,地方千里,衆数十万人,亦足王也。願大王急渡。今独臣有船,漢軍至,無以渡。」項王笑曰:「天之亡我,我何渡為!且籍与江東子弟八千人渡江而西,今無一人還,縦江東父兄憐而王我,我何面目見之?縦彼不言,籍独不愧於心乎?」乃謂亭長曰:「吾知公長者。吾騎此馬五歳,所当無敵,嘗一日行千里,不忍殺之,以賜公。」乃令騎皆下馬歩行,持短兵接戦。独籍所殺漢軍数百人。項王身亦被十余創。顧見漢騎司馬呂馬童,曰:「若非吾故人乎?」馬童面之,指王翳曰:「此項王也。」項王乃曰:「吾聞漢購我頭千金,邑万戸,吾為若徳。」乃自刎而死。
6.予想問題
7.予想問題の解答
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