1.現文単語帳
分析 | ふ | 複雑な事物を単純な要素に分けて、その性質や構造を明らかにすること。 |
総合 | そ | 個々別々の要素をまとめあげること。 |
対象化 | た | 主観をまじえず認識すること。 |
因果関係 | い | 原因と結果の関係。 |
機械論的自然観 | き | あらゆる自然現象を機械のメカニズムになぞらえて理解する思考態度。 |
還元 | か | ①元の状態に戻すこと。返すこと。 ②基礎的なもの。単純なものへと段階を下げること。 |
要素還元主義 | よ | 複雑で多様な現象を単純な要素に分析して解明しようとする考え方。 |
科学革命 | か | ①十七世紀のヨーロッパで、自然科学が大きな変化を遂げたこと。 ②科学に対する考え方の枠組みが大きく変化すること。 |
パラダイム | は | ある時代や分野において支配的な物の見方や捉え方。 |
科学者共同体 | か | 科学を専門的な職業とする人々の社会的組織。 |
科学の制度化 | か | 科学が国家・企業と結び付いて組織的に研究されるようになること。 |
科学主義 | か | 科学的な知識や方法を絶対視する立場。科学は万能だとする考え方。 |
反科学 | は | 科学・技術の負の側面を強調し、科学に対して批判的になること。 |
疑似科学 | き | 科学を装っているが、科学とはいえない研究や主張。 |
臓器移植 | そ | 機能不全となっている臓器に代わって, 他人の正常な臓器を移植すること。 |
脳死 | の | 脳の機能が停止し,回復不能となった状態。 死の定義の一つとされている。 |
遺伝子 | い | 生物の遺伝形質を規定する情報のまとまり。 |
バイオテクノロジー | は | 生命現象のしくみを解明し, 産業技術に応用していく研究。 |
生態系 | せ | 一定の地域に生息する生物群集と, それをとりまく環境との連関。 |
エコロジー | え | ①生態学。 ②自然環境との共生をめざす思想。 |
有機 | ゆ | 生命機能があること。 |
無機 | む | 生命機能がないこと。 |
生命倫理 | せ | 医療や生命科学に関わる問題を 倫理的に検討すること。 |
環境倫理 | か | 環境とのかかわりのなかで 人間の生き方を問うこと。 |
進化論 | し | 生物は神の創造によるものではなく、 単純な原始生命から現在の形態へ進化してきたという説。 |
し | 自然界で生存に有利な形質をもつ個体だけが生き残り、 それ以外は滅びるという進化論の中心概念。 |
|
近代合理主義 | き | 理性による判断を絶対視する態度。 |
世俗化 | せ | 社会が宗教的価値観から離れていくこと。 |
ルネサンス | る | 十四~十六世紀に、イタリアを中心に ヨーロッパで起きた芸術・文化の革新運動。 |
宗教改革 | し | 十六世紀のヨーロッパに起こった宗教運動。 ローマ・カトリック教会の腐敗を批判し、 聖書中心主義を説いた。 |
ヒューマニズム | ひ | 人間性を尊重する思想。 |
人間中心主義 | に | 神に代わって、人間の理性を世界の中心とする態度。 |
け | 十七~十八世紀のヨーロッパで起きた思想運動。 理性にもとづいて、伝統的偏見・迷信・ 慣習・不合理な社会制度を打破しようとした。 |
|
ロマン主義 | ろ | 十八世紀末~十九世紀にヨーロッパで広がった、 人間の個性と感情を重視する芸術・文化の運動。 |
個人 | こ | 社会を構成する、自律的に行動する主体。 |
共同体 | き | ①土地や生活基盤を共有する村落集団。 ②血縁や地縁、感情的なつながりをきばんとした集団。 |
市民社会 | し | 自由で平等な個人によって成り立つ近代社会。 |
国民国家 | こ | 一つの国民(民族から形成されている国家。) |
ナショナリズム | な | 国家・民族の統一・独立・発展を 推し進めようとする思想や運動。 |
国語 | こ | 一つの独立国家において公に認められた言語。 |
標準語 | ひ | ある国の国語において規範となる言語。 学校・放送・新聞などで広く用いられる。 |
想像の共同体 | そ | 国民国家は虚構(フィクション)によって 創られた共同体であるという理論。 |
民主主義 | み | 国民の意思に従って政治を行う体制。 |
自由主義 | じ | 国家の干渉を排除し、 個人の自由を尊重する思想。 |
個人主義 | こ | 個人の自由や権利を 尊重する考え方。 |
全体主義 | ぜ | 国家の利益を最優先し、 個人の自由や利益を否定する政治思想や政治体制。 |
資本主義 | し | 私有財産制・経済活動の自由・利潤追求を 原則とする経済体制。 |
社会主義 | し | 生産手段を社会で共有することで、社会の平等を実現しようとする理論・体制。 |
産業革命 | さ | 十八世紀のイギリスで起きた産業・経済体制の変革。 |
帝国主義 | て | 国家が軍事力で他の民族や国家を侵略し、 自国の領土・勢力の拡大をはかろうとする政策や動向。 |
資本 | し | 生産活動に使用される資金や工場・設備。 |
労働力 | ろ | 生産のために費やされる、仕事をする能力。 資本主義のもとでは、商品として扱われる。 |
し | 商品の交換や売買や、交換が行われる場所やシステム。 | |
貨幣 | か | 商品やサービスと交換できる価値があるものとして、 社会に流通しているもの。 |
均質な時間 | き | 時計によって計測される客観的な時間。 |
円環時間 | え | 太陽の運行や季節の循環をベースに作られた時間意識。 |
均質な空間 | き | 座標軸によって計測される客観的な空間。 |
トポス | と | 意味を帯びている場所。 |
都市 | と | 異質な人々が大規模に密集している地域。 |
風景 | ふ | 人間によって生み出される景色。 |
ほ | ①領主と家臣の主従関係を基盤とした政治制度。 領主は家臣に土地を与え、家臣は領主に対して軍役の義務を持つ。 ②領主が農民を土地に縛り付け支配する土地所有の制度。 |
|
封建的 | ほ | 個人の自由・権利よりも上下関係を重視するさま。 |
社会契約説 | し | 社会・国家は平等な個人の契約によって成立するという思想。 |
疎外 | そ | ①よそよそしくすること。 ②人間が作り出したものに、人間が支配されること。 |
ニヒニズム | に | 既成の秩序や価値を否定し、あらゆるものを無意味とする考え方。 |
ポストモダン | ほ | 近代の理性中心主義を批判し、 多様な価値観の共存を求める思想の傾向。 |
大きな物語 | お | 社会全体に目標を与えるような思想やイデオロギーのこと。 |
脱構築 | た | 二項対立的な発想に隠れた自己矛盾を暴くこと。 |
冷戦 | れ | 第二次世界大戦後、アメリカ中心の資本主義陣営と 旧ソ連中心の社旗主義陣営との間で続いた対立関係。 |
グローバリゼーション | く | ヒト・モノ・カネ・情報が国境を越えて 世界規模で一体化していくこと。 |
単語 | 意味 |
をかし | ①素晴らしい(好評価) ②滑稽だ(面白おかしい) |
よろし | ①悪くはない ②普通だ |
よし | ①良い ex.良き良き ②(身分などが)高い |
ありがたし | ①滅多にない(有り難い) ②素晴らしい |
つきづきし | ①似つかわしい 相応しい |
なまめかし | ①優美だ,上品だ ②若々しい,瑞々しい |
めでたし | ①素晴らしい |
うるはし | ①きちんとしている,整っている ②立派だ,美しい,見事だ |
やむごとなし | ①高貴だ,尊い ②格別だ,並々でない 略:やごとなし |
おとなし | ①大人らしい,ませている ②思慮分別がある 落ち着いている ③主立っている |
ゆかし | ①見たい,聞きたい ②心惹かれる,慕わしい |
なつかし | ①親しみ深い,心惹かれる 好ましい |
はづかし | ①恥ずかしい,決まり悪い ②(相手が)立派だ |
こころにくし | ①奥ゆかしい,上品だ |
うつくし | ①可愛い,愛しい ②悲しい |
らうたし | ①可愛い,いじらしい |
めやすし | ①感じが良い,見苦しくない |
あやし(怪し) | ①不思議だ,妙だ |
あやし(賤し) | ①身分が低い,卑しい ②粗末だ,みずぼらしい |
さうざうし | ①もの足りない |
つれなし | ①平然としている,平気だ ②冷淡だ,薄情だ |
なめし | ①無礼だ |
おどろおどろし | ①大げさだ,仰々しい ②気味が悪い,恐ろしい |
憂し | ①辛い,嫌だ,情けない |
むつかし | ①不快だ,煩わしい,鬱陶しい ②気味が悪い,恐ろしい |
すさまじ | ①興覚めだ,面白くない ②殺風景だ,寒々としている |
びんなし | ①不都合だ,具合が悪い ②気の毒だ,労しい |
いとほし | ①気の毒だ,可哀そうだ ②愛しい,可愛い |
いはけなし | ①幼い,あどけない,子供っぽい |
つらし | ①薄情だ,冷淡だ ②辛い |
ところせし | ①窮屈だ,あふれている ②気詰まりだ |
うしろめたし | ①きまり悪い,恥ずかしい ②苦々しい,みっともない ③気の毒だ,心苦しい |
わりなし | ①道理に合わぬ,酷い,無理矢理だ ②仕方ない,どうしようもない ③苦しい,辛い,困っている |
ほいなし(本意なし) | ①不本意,残念だ |
あさまし | ①驚くほどだ ②呆れるほどだ ③情けない,嘆かわしい |
めざまし | ①気に食わぬ,目障りだ ②素晴らしい,立派だ |
いみじ | ①とても良い,素晴らしい ②とても悪い,酷い ③とても |
ゆゆし | ①不吉だ,縁起が悪い ②とても良い,素晴らしい ③とても,はなはだしく |
やさし | ①恥ずかしい,決まり悪い ②優美だ,上品だ,風流だ ③けなげだ,感心なことだ |
しるし(著し) | ①はっきり分かる ②~の通りに |
とし | ①早い,速い |
ゆくりなし | ①突然だ,思いがけない |
おぼつかなし | ①はっきりしない ②気掛かり,不安だ ③待ち遠しい,じれったい |
心もとなし | ①はっきりしない,微かだ ②気掛かり,不安だ ③待ち遠しい,じれったい |
あはれなり | ①深く感じさせられる |
つれづれなり | ①退屈である ②物寂しい |
すずろ(そぞろ)なり | ①何ということもない ②思いがけぬ ③むやみやたらだ |
まめなり | ①真面目である,誠実である ②実用的である |
あだなり | ①儚い,頼りにならぬ,脆い ②誠実さがない,浮ついている |
いたづらなり | ①役に立たない,無駄だ ②空しい,儚い |
優なり | ①優れている,立派だ ②上品で美しい,優雅である |
あてなり | ①高貴である,身分が高い ②気品がある,上品である |
あからさまなり | ①ほんの一寸,一時的に |
みそかなり | ①密かに,こっそりと |
おろかなり | ①いい加減だ ②並みととおりだ ③言い尽くせない |
をこなり | ①愚かだ,間抜けだ 馬鹿馬鹿しい |
むげなり | ①酷い,最低最悪だ ②むやみに,酷く |
なかなかなり | ①中途半端だ ②却ってしない方が良い |
今井四郎、木曾殿、主従二騎になつてのたまひけるは、「日ごろは何とも覚えぬ鎧が今日は重うなつたるぞや。」今井四郎申しけるは、「御身もいまだ疲れさせ給はず。御馬も弱り候はず。何によつてか、一領の御着背長を重うは思し召し候ふべき。それは御方に御勢が候はねば、臆病でこそさは思し召し候へ。兼平一人候ふとも、余の武者千騎と思しめせ。矢七つ八つ候へば、しばらく防き矢つかまつらん。あれに見え候ふ、粟津の松原と申す、あの松の中で御自害候へ。」とて、打つて行くほどに、また新手の武者五十騎ばかり出で来たり。「君はあの松原へ入らせ給へ。兼平はこの敵防き候はん。」と申しければ、木曾殿のたまひけるは、「義仲、都にていかにもなるべかりつるが、これまで逃れ来るは、汝と一所で死なんと思ふためなり。所々で討たれんよりも、ひと所でこそ討ち死にをもせめ。」とて、馬の鼻を並べて駆けんとし給へば、今井四郎馬より飛び降り、主の馬の口に取りついて申しけるは、
「弓矢取りは年ごろ日ごろいかなる高名候へども、最期のとき不覚しつれば、長き疵にて候ふなり。御身は疲れさせ給ひて候ふ。続く勢は候はず。敵に押し隔てられ、言ふかひなき人の郎等に組み落とされさせ給ひて、討たれさせ給ひなば、『さばかり日本国に聞こえさせ給ひつる木曾殿をば、それがしが郎等の討ち奉つたる。』なんど申さんことこそ口惜しう候へ。ただあの松原へ入らせ給へ。」と申しければ、木曾、「さらば。」とて、粟津の松原へぞ駆け給ふ。今井四郎ただ一騎、五十騎ばかりが中へ駆け入り、鐙踏ん張り立ち上がり、大音声あげて名乗りけるは、「日頃は音にも聞きつらん、今は目にも見給へ。木曽殿の御乳母子、今井四郎兼平、生年三十三にまかりなる。さる者ありとは、鎌倉殿までも知ろし召されたるらんぞ。兼平討つて見参に入れよ。」とて、射残したる八筋の矢を、差し詰め引き詰め、散々に射る。死生は知らず、やにはに敵八騎射落とす。そののち打ち物抜いて、あれに馳せ合ひ、これに馳せ合ひ、切つて回るに、面を合はする者ぞなき。分捕りあまたしたりけり。ただ、「射取れや。」とて、中に取りこめ、雨の降るやうに射けれども、鎧よければ裏かかず、あき間を射ねば手も負はず。
木曽殿はただ一騎、粟津の松原へ駆け給ふが、正月二十一日、入相ばかりのことなるに、薄氷は張つたりけり、深田ありとも知らずして、馬をざつと打ち入れたれば、馬の頭も見えざりけり。あふれどもあふれども、打てども打てども働かず。今井が行方のおぼつかなさに、ふり仰ぎ給へる
単語 | 意味 |
字 | あざな 元服の時に本名(諱)とは別につける呼び名 |
海内 | かいだい 国内,天下 |
寡人 | かじん(⇔対義語:朕) 王侯の自称,謙称。代用皇帝語は朕 |
干戈 | かんか 武器,戦争 |
諫言 | かんげん 王など目上の人の間違いや過ちを諌めること |
奇才 | きさい 優れた才能,優れた人物 |
期年 | きねん まる一年,一周年 |
堯舜 | ぎょうしゅん 中国古代の伝説上の聖天子。(堯と舜) |
郷党 | きょうとう 村里・村 |
君子 | くんし 人徳の優れた立派な人。 |
桀紂 | けっちゅう 夏王・桀と殷王・紂のこと。暴君の代名詞。 |
乾坤 | けんこん 天地。「乾坤一擲」など。 |
胡 | こ 中国北西の異民族。「胡人」はソグド人。 |
光陰 | こういん 時間・歳月・月日。「一寸の光陰軽んずべからず」。 |
江河 | こうが 長江と黄河。巨大河川。 |
古人 | こじん 昔の人。亡くなっている人。 |
故人 | こじん 旧友。昔馴染。 |
左右 | さゆう 側近の臣。近臣。 |
子 | し あなた。先生。 |
士 | し 卿・大夫に次ぐ官吏。学徳のある立派な人物。武士。 |
師 | し 軍隊・都。先生・手本。 |
社稷 | しゃしょく 国家。土地神と五穀の神。 |
豎子 | じゅし 幼児・子供・童僕・小僧。 |
須臾 | しゅゆ ほんの短い間。僅かな時間。暫く。 |
書 | しょ 手紙・書物。 |
城 | じょう 城壁をめぐらした市内。「城市」。 |
小人 | しょうじん 人格の低いつまらぬ人間。身分の低い者。 |
丈夫 | じょうぶ 一人前の立派な男。優れた立派な人物。 |
食客 | しょっかく 客分として抱えておく家来。居候。 |
信 | しん 嘘を吐かないこと。真実・誠実・正直。 |
仁 | じん 慈しみ。思いやり。愛。儒教の最高の徳目。 |
人間 | じんかん 人間の世界。世の中。世間、俗世界。 |
寸毫 | すんごう ほんの僅か。 |
聖人 | せいじん 最高の人徳を持った立派な人。 |
千乗国 | せんじょうのくに 戦車千台を出せる程の強国。 |
千里馬 | せんりのうま 一日に千里も走る駿馬・名馬。転じて俊才・有能な人材。 |
粟 | ぞく 穀物。 |
長者 | ちょうじゃ 年長者。目上・徳が高い人。富豪・権勢のある人。 |
天年 | てんねん 寿命・天寿。 |
南面 | なんめん 天子・天子の位。天子として政治をすること。 |
二三子 | にさんし おまえたち(師匠が弟子に対して呼ぶ語)。 |
白頭 | はくとう 白髪の頭。 |
匹夫 | ひっぷ 一人の男、身分の低い男。つまらぬ男。 |
為レ人 | ひととなり 人柄・性格。 |
百姓 | ひゃくせい 人民。万民。 |
布衣 | ふい 平民・無位無官の者。 |
夫子 | ふうし 先生。あなた。 |
不肖 | ふしょう 愚かなこと。自分の謙称。愚かな息子。 |
兵 | へい 武器・兵士・軍隊。戦争。 |
吏 | り 官吏・役人。 |
晉太元中、武陵人、捕魚爲業。緣溪行、忘路之遠近。忽逢桃花林、夾岸數百步、中無雜樹、芳草鮮美、落英繽紛。漁人甚異之。復前行、欲窮其林。林盡水源、便得一山。
山有小口、髣髴若有光。便捨船、從口入。初極狹、纔通人。復行數十步、豁然開朗。土地平曠、屋舍儼然。有良田、美池、桑竹之屬。阡陌交通、鷄犬相聞。其中往來種作、男女衣著、悉如外人。黃髮垂髫、並怡然自樂。
見漁人、乃大驚。問所從來、具答之。便要還家、設酒殺鷄作食。村中聞有此人、咸來問訊。自云先世避秦時亂、率妻子邑人來此絶境、不復出焉、遂與外人間隔。問今是何世、乃不知有漢、無論魏晉。此人一一爲具言所聞、皆歎惋。餘人各復延至其家、皆出酒食。停數日、辭去。此中人語云、「不足爲外人道也。」
既出、得其船、便扶向路、處處誌之。及郡下、詣太守、説如此。太守即遣人隨其往、尋向所誌、遂迷、不復得路。南陽劉子驥、高尚士也。聞之、欣然規往。未果、尋病終。後遂無問津者。
晋の太元年間に、武陵の人で、魚を取ることを職業としている人がいた。 ある日、谷川に沿って船で行くうちに迷って、どれほどの道のりかが分からなくなってしまった。 突然、桃の花の咲いている林に出くわした。桃の木は川の両側に数百mあり、中には(桃以外の)他の木は混ざってなかった。香りの良い草が鮮やかで美しく、(桃の)花びらが乱れ散っている。漁師は、この景色をたいそう不思議に思い、さらに先に進んで、その林の奥を突き止めようとした。林は川の水源で終わり、すぐに一つの山を見つけた。
山に小さな穴があり、(穴の中の奥のほうが)かすかに見えて光があるようだった。そこで船を置いて、穴から中に入った。はじめのうちは非常にせまく、人がやっと通れるだけだった。さらに数十m進むと、広々として明るいところだった。土地は平らで広く、家屋は整然と並んでいる。良い田、美しい池、桑や竹の類がある。田畑のあぜ道が縦横に通じ、鶏や犬の鳴き声が聞こえてくる。 その中を(人々が)往来して種をまき耕作している男女の衣服は、(漁師から見ると)「外人」のようであった。髪の毛の黄色くなった老人や、おさげ髪の子どもが、皆、楽しそうにしている。
(村人は)漁師を見て大変おどろき、どこから来たのかを尋ねた。(漁師は)詳しく質問に答えた。(村人は)ぜひ家に来てくれと、(そして)酒を出して鶏を殺して(肉料理をつくり)、食事を作って(もてなして)くれた。村中、この人が来たのを聞いて、皆やって来て、話を聞いてくる。(村人が)自ら言うには、「先祖は、秦の時代の戦乱を避けて、妻子や村人を引き連れて、この世間から隔絶した地に、やって来て、二度とは世間に出ませんでした。そのまま、外の世界とは、隔たってしまったのです。」と。(そして村人が)質問するのは、「今は、(外の世界は、)何という時代なのですか。」と。(なんと / つまり)村人は、漢の時代があったのを知らず、(その後の時代の)魏・晋は言うまでもない。(魏晋を知らない。) この人(=漁師)は村人のために、一つ一つ、聞かれたことを、細かく、答えてあげた。皆、驚き、ため息をついた。他の村人たちも、それぞれまた、漁師を招待して、酒や食事を出す。(こうして漁師は)数日間、とどまってから、(村人に)別れを告げた。(別れ際に)この村の中の人が語るには、「外の世界の人には、言うほどのことではありません(ので、言わないでほしい)。」と。
(漁師は)既に(村を)出て、自分の船を見つけ、ただちに、以前(来たとき)の道をたどって、(帰りながら、)ところどころに目印をつけた。(帰宅後、漁師は)郡の役所のある町に行き、太守に面会して頂いて、このようなことがあったと報告した。太守はすぐに人を派遣して、漁師が(案内で)行くのに付いて行かせ、先ほど目印をつけておいた所を探させたが、結局迷ってしまい、(桃花源の村への)道を探しだすことはできなかった。南陽の劉子驥(りゅうしき)は、志の高い人である。この(桃花源の)話を聞き、喜んで、その村に行こうと計画した。(しかし)まだ実現しないうちに、そのうち病気にかかって死んでしまった。これ以降、(漁師が降りた桃花源への)船着き場を探す者は、そのまま、いない。
尚、これについてWikibooksに依ると,或曰「天道無親。常与善人。」若伯夷・叔斉、可謂善人者、非邪。積仁絜行如此而餓死。且七十子之徒、仲尼独薦顏淵為好学。然回也屢空、糟糠不厭、而卒蚤夭。天之報施善人其何如哉。
盜蹠日殺不辜、肝人之肉、暴戻恣睢、聚党数千人、横行天下、竟以寿終。是遵何徳哉。此其尤大彰明較著者也。
若至近世、操行不軌、専犯忌諱、而終身逸楽富厚、累世不絶、或択地而蹈之、時然後出言、行不由径、非公正不発憤、而遇禍災者、不可勝数也。余甚惑焉。儻所謂天道、是邪非邪。
ある人は言った、「天の道は特定の人だけを親しくするようなことはしない。いつでも善人の味方である」と。伯夷・叔斉のような人は善人というべきものだろうか、そうでないのだろうか。(ふたりは)人徳にかなった行いを積み重ね、清廉潔白な行為を行って、しかも餓死した。それに(孔子の)七十人の弟子の内、仲尼はただ顔淵だけを学問好きな者として推薦した。しかし、回はしばしば経済的に困窮し、粗末な食事さえ満足に取れず、とうとう若死にした。天が善人に報いるとは、いったいどういうことなのか。
盜蹠は毎日罪のない人を殺して人の肉をなますにして食べ、乱暴で勝手にふるまい、数千人で徒党を組んで、天下の中を暴れまわったが、結局天寿を全うした。これは何の徳によるものだろうか。これはもっとも(矛盾が)はっきりとしている物である。
近い時代といえば、品行が悪くて道に外れ、もっぱら法で禁止されていることを犯していても、生涯遊び楽しみ裕福な暮らしをし、子孫代々続いていく者、あるいは仕えるべき場所を選んで仕え、言うべきときに発言し、公明正大で、それだけに心を奮い立たせるも、災難に遭うような者は数え切れないほどである。(だから)私はひどく戸惑うのである。もしかすると、世間で言う天の道ははたして正しいのだろうか、いや正しくない。