これからの人権保障
1.新しい人権①-産業や科学技術の発展と人権
<社会の変化と新しい人権>
  • 憲法に直接規定されていない権利
    ・産業の発達や科学技術の発展,情報化の進展等に伴い,
    憲法に細かい規定のない権利が主張されるようになった。
    ⇒「新しい人権
    ・例えば,環境権,自己決定権,知る権利,プライバシーの権利等である。
    環境権
  • 深刻な環境破壊
    高度経済成長期に相次いで起こった公害,
     とりわけ四大公害は,経済成長が優先された結果,
     環境汚染の悪化が軽視された為,深刻化した。
    ・被害が広がると,公害を発生させる企業や,
     それを放置している行政を批判する世論が高まり,
     公害追放を訴える住民運動が各地で展開されて,
     被害者とその支援者は公害企業と行政の責任を追及して裁判を起こした。
    原告勝訴の判決が次々と出されたことから,
     行政は本格的に公害対策に取り組むようになった。
     そこで,国は,公害対策基本法を定め,環境庁を設置し,
     更に,環境保全のために,国・地方自治体の責務を明記した,環境基本法が制定された。
    特集
    [四大公害]
  • 水俣病
    ・1953年頃,チッソ(=新日本窒素)水俣工場から,未処理のまま八代海(=不知火海),
     とりわけ水俣湾に流されていたメチル水銀化合物による慢性神経系疾患新潟水俣病
    ・新潟県阿賀野川流域で昭和電工鹿瀬工場から排出された有機水銀による慢性神経系疾患。
    1971年9月,判決で原告全面勝訴。
  • イタイイタイ病
    ・富山県神通川流域で,三井金属神岡鉱業所からの廃液中のCd汚染
    ・1972年8月判決で原告全面勝訴。四日市喘息
    ・三重県四日市塩浜地区の石油コンビナートから硫黄酸化物(亜硫酸ガス)等による大気汚染。
    1972年7月,判決で原告全面勝訴。
    <自己決定権>
  • 医療分野では
    ・患者が治療方法等を自己決定できるように手術等の前に,
     インフォームド・コンセントが求められる。
     死後,自分の臓器の移植を待つ患者に提供する臓器提供意思表示カードもその一つ。
    科学技術の発展と人権
  • 生命と人権にかかわる難しい課題
    延命治療を拒否する尊厳死や,
     医師の手を借りて
    死を選ぶ安楽死も主張されている。
    ・遺伝子治療やクローン人間は,生命倫理にかかわる問題を抱えている。
    2.新しい権利②-情報化の進展と人権-
    <知る権利>
  • 情報公開制度
    ・国民は,主権者として,政治について判断するには,多くの情報を入手し,分析する必要がある。
    ・情報化社会の現在は,重要情報が政府・地方自治体に集中管理されている。
    ・これらの情報を手に入れる権利=「知る権利」を保障するために情報公開制度が設けられている
    ・この制度は,公正で透明性の高い政治の実現のために必要な制度だが,
     公開された資料が黒く塗りつぶされている事も多く,
     公開する側に判断が委ねられている。
    ・新聞・TV・ラジオ・雑誌といった報道機関は,
     自らの取材に基づく情報収集によって広く伝える事で国民の知る権利を支えている
    <プライバシーの権利>
  • 個人情報の保護
    ・住所・電話番号・病歴・信仰宗教といった個人情報が,
     本人の同意なく収集・悪用されるのを防ぐため,
     国・地方機関や民間情報管理会社に
     個人情報の慎重な管理を義務付ける個人情報保護制度が設けられている。
    ・個人の顔や姿を写真や動画映像として撮影されたり公開されない
     肖像権も守られなければならない。
    <インターネットと人権>
  • ネット社会の功罪
    ・情報の発信や入手がインターネットによって誰でも容易にできるようになって便利になり,
     公共機関の情報も得やすくなって知る権利にはプラスになった。
    ・一方,ネット上でプライバシーの権利を侵害したり,違法な情報が流出することも多く,
     匿名やなりすましで他人の名誉を傷つける無責任な言論や差別表現も見られる。
    ・今後,インターネット利用の仕組みをどう整えるかが課題である。
    現代の民主主義
    1.政治参加と選挙
    <選挙の基本原則>
  • 4原則
    一定年齢のすべての国民が選挙権を持つ普通選挙
    ・各種の投票で一人一票とし,一票に格差を付けない平等選挙
    ・米大統領選挙のような間接選挙でない直接選挙
    ・投票した政党・候補が分からない秘密選挙
    <日本の選挙制度>
  • 衆議院:選挙区比例代表並立制。
       ⇒小比ともに重複立候補可能
    小選挙区は全国に289あり,議員定数289議席
    比例代表は全国に11ブロックあり,定数176議席
  • 参議院:3年毎に半数が改選される。
    選挙区(定数1~6)から定数146議席(3年毎に73議席が改選)
    ・全国を1つの単位とした比例代表は定数96議席(3年毎に48議席が改選)
     有権者は,政党名,候補者名のどちらを書いても投票できる・・・非拘束名簿式
    国の政治の仕組み
    1.国会の地位と仕組み
    <国会の地位・二院制・衆議院の優越>
  • 日本国憲法第41条[国会の地位・立法権]
     国会は,国権の最高機関であつて,国の唯一の立法機関である。
    ・私達は,主権者として国会でどのような議論がなされているか,
     国民が選んだ国会議員の言論を注視する必要がある。
  • 日本国憲法第42条[二院制(両院制)]
     国会は,衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
    衆議院議員任期は4年だが,衆議院が解散されると,
     任期前に終了し,解散から40日以内に総選挙が行われる。
    ・参議院議員は,任期が6年3年ごとに半数が改選される。
  • 衆議院の優越
    ・予算案は,衆議院が先議する=予算の先議権
    予算の議決,条約の承認,内閣総理大臣の指名では,
     参議院の議決を国会の議決をする。
    ・参院で否決された法案で,衆院で2/3以上の賛成で再可決されれば,法律として成立する。
    内閣不信任案の提出ができるのは,衆院のみ。
    <国会の会期>
  • 常会(通常国会)
    ・毎年1回1月中に召集され,会期は150日間
  • 臨時会(臨時国会)
    内閣が必要と認めたとき,又は衆参いずれの議院でも,1/4以上の要求があれば,開く事ができる。
  • 特別会(特別国会)
    ・衆院解散後,総選挙の日から30日以内に召集される。
    ・内閣総理大臣の指名選挙を行い,新内閣を組織する。
  • 参議院の緊急集会
    ・衆議院の解散中,緊急の必要がある場合に内閣の求めに応じて開会される。
    2.国会の働き
    <法律の制定>
  • 立法の流れ
    ・内閣は,各省庁が立案した法案を国会(衆参いずれか)に提出すると,
     先議の議院で審査会審査・採決の上,
     本会議に上程され,可決(通過)すれば,
     後議の議院で同様の経過を経て可決されれば,法律として成立する。
    国会議員による議院発議で国会に提出する事ができる。・・・議員立法
    <予算の先議・議決>
  • 衆院優越
    ・予算の先議権のほか,衆院で可決した予算案が参院で30日以内に議決されないか否決された場合,
     衆院の議決が国会の議決となる。
    <内閣総理大臣の指名と国会のその他の仕事>
  • 首相指名選挙
    ・衆参両院それぞれで国会議員の中から指名選挙が行われ,異なる人物が指名された場合は,
     両院協議会が開かれるが,まとまらない場合は衆院の議決が優先される。
  • 国会その他の仕事
    ・内閣の結んだ条約を承認する事・・・批准するのも国会の仕事。
    ・憲法改正の発議は衆参両院の総議員の2/3以上で国民に提案。
    ・国会(議員)は国政調査権があり,弾劾裁判所を設置できる。
    3.行政の仕組みと内閣
    行政とは>
  • 国の行政
    ・国会で決定した法律・予算にもとづいて政策を実施する
    外交,景気安定,雇用確保といった経済政策,
     インフラ整備等の公共事業。
     医療・年金等の社会保障や教育・文化の向上,
     公害抑制や環境保全等多岐にわたり,各行政機関が行う
     ⇒TP89の組織図を参照
    <内閣の仕事と組織>
  • 内閣の仕事
    ・省庁等の行政機関を指揮監督し,
     各部門を通じて法律で定められた事を実施する。
    ・そのために,法案・予算案等を作成して,
     国会に提出し,外国と条約を締結する。
    最高裁判所長官の指名,裁判官の任命,天皇の国事行為への助言と承認を行う。
  • 内閣の組織
    ・内閣は,総理大臣とその総理大臣に任命された国務大臣により組織され,
     過半数は国会議員でなくてはならない。
    ・国務大臣の多くは,各省の長となり,総理大臣は国務大臣を集めて閣議を開き,
     行政運営を決する。(=閣議決定)
    <議院内閣制>
  • 日本の議院内閣制と米の大統領制
    ・議院内閣制では,国民は国会議員を国政選挙で選び,国会議員が首相を指名選挙で選出する。
    ・大統領制では,上・下院選挙と大統領選挙は別々に行われる。
  • 内閣と国会の関係
    ・内閣は国民の選んだ国会議員が過半数を占める国務大臣によって組織され,
     国権の最高機関である国会の信任に基づいて成立するため,
     衆議院で内閣不信任となれば,10日以内に衆院を解散するか,
     内閣を総辞職
    しなければならない。
    ・『衆院の内閣不信任決議権内閣の衆院解散権とは,
     互いに抑制しあう均衡で成り立っている証左といえる』
    5.裁判所の仕組みと働き
    <司法と裁判所>
  • 裁判所の種類
    最高裁判所下級裁判所に分類され,
     下級裁判所には,高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所,簡易裁判所の4種がある。
  • 三審制
    ・第一審:内容によって,地裁・家裁・簡裁のいずれかで行われ,
         判決が不服な場合は上級裁判所に控訴できる。
    ・第二審:控訴審。ここで不服ならば,上級裁判所に上告できる。
    ・第三審:上告審。ここで結審し,判決は確定する
    <司法権の独立>
  • 裁判の公正・中立
    ・憲法第76条第3項
     すべて裁判官は,その良心に従ひ独立してこの職権を行ひ,この憲法及び法律にのみ拘束される。
  • 裁判官の身分保証
    心身の故障,弾劾裁判での解任,国民審査を除いて,在任中は身分が保障される。
    6.裁判の種類と人権
    民事裁判
  • 原告・被告
    ・自分の権利を侵害されていると考えた人が裁判所に訴える(=原告)と,
     訴えられた者は被告となって裁判が始まる。
    ・裁判官は双方の言い分を聞いて,当事者同士の話し合い(=和解)を促すが,
     和解できない場合は,裁判で判決を下す。
    刑事裁判
  • 犯罪行為が起こると...
    ・警察・検察が捜査し,被疑者を探して証拠を集め,
     取調べの上,逮捕・勾留する。
    ・検察は,起訴・不起訴を判断し,起訴する場合は,
     被疑者を被告人として裁判所に公訴する。
    <裁判と人権保障>
  • 刑事裁判における被疑者・被告人の権利
    ・警察・検察における捜査の行き過ぎを防ぐために,
     現行犯を除いて逮捕状・捜査令状がなければ,逮捕・捜索できない。
    ・捜査・事情聴取の際,拷問は禁止され,被疑者(被告人)は質問に答える事を拒否したりする黙秘権を行使できる。
    ・弁護士を依頼する権利があり,経済的な面から国選弁護人をつけることができる。
    ・被告人は,有罪の判決が出るまでは推定無罪とされる。
    7.裁判員制度と司法制度改革
    <司法制度改革と裁判員制度>
  • 様々な制度改革
    ・人々が利用し易い裁判制度にするために,
     日本司法支援センター(法テラス)が設立された。
  • 裁判員制度
    ・国民が裁判員として刑事裁判に参加し,裁判官と一緒に被告人の有罪・無罪や刑罰を決める制度。
    ・対象となるのは殺人・強盗致死傷等の重大な犯罪についての刑事事件で,
     地裁で扱う第一審のみに参加し,第二,三審には参加しない。
    ・一つの事件に原則6人の裁判員3人の裁判官が担当し,
     裁判員は公判に出廷して,裁判員と裁判官が話し合い,(評議)
     有罪か無罪か,有罪ならば刑罰の内容を決める。(評決)
    ・意見がまとまらない場合,多数決で決定するが,多数側に1人以上の裁判官が含まれている必要がある。
    ・国民が裁判に参加する事によって,裁判の進め方や内容に国民の視点や感覚を反映させ,
     司法に対する理解や信頼が深まる事が期待される。
    <取調べの可視化と被害者参加制度>
  • 取調べの可視化
    ・司法では冤罪を防ぐ必要から,自白の強要等行き過ぎた捜査をさせないために,
     警察や検察での録画・録音による取調べの可視化が進められている。
  • 被害者参加制度
    ・それまでの刑事裁判では,遺族はもちろん被害者も裁判に参加できなかったが,
     重大犯罪事件では,被害者や配偶者・親族や兄弟姉妹,
     法定代理人出廷して被告人や証人に質問できるようになった。
    検察審査会
  • 不起訴事件の審査
    ・検察官が独占している起訴する権限に対して,民意を反映させ,不当な不起訴処分を抑制するため,
     検察官が起訴しなかった事の是非を審査する。
    ・無作為に選出された有権者11名の審査員の審査の結果,
     「起訴相当」「不起訴不当」という審査会の判断がなされれば,
     検察官はもう一度起訴するか否か再検討しなくてはならない。
     「起訴相当」の判断が2回なされれば,「起訴議決」となり強制的に起訴される(=強制起訴)。
    <違憲審査制>
  • 違憲か合憲か
    ・最高裁判所は国会が制定した法律が合憲か違憲かについて,
     最終的な決定権(=違憲立法審査権)を持ち,「憲法の番人」と呼ばれる。
    ・裁判所は,法律や政令が合憲か違憲かについて,具体的な事案についての裁判を通して審査する。
  • 立憲主義に基づく
    ・違憲審査制の基本は,立憲主義の考えに立脚したもので,
     これによって憲法が国のの最高法規である事が確保されている。
    ・これまでの裁判所の判決であると,合憲か違憲かの判断を避けるものも多く,
     もっと積極的に違憲審査に取り組むべきだとの声もある。
    地方自治と私達
    1.私達の暮らしと地方自治
    <地方自治とは>
  • 地方公共団体(=地方自治体)
    ・都道府県・市区町村・特別区等を指す。
    ・地方自治は,私達の暮らしに身近な民主政治の場であることから,「民主主義の学校」と呼ばれる。
    <国と地方公共団体の役割と地方分権>
  • 役割分担
    ・住民にとって身近な仕事   :家庭ゴミの収集,小中学校教育等   →市区町村の仕事。
    ・複数の市区町村にまたがる仕事:河川・道路の維持,高等学校教育・警察→都道府県の仕事。
    ・外交や防衛,年金等の国際的・全国規模の仕事→国の仕事。
  • 地方分権
    ・それぞれの地方公共団体が独自の活動を行えるように,地方分権一括法が制定され,
     仕事や財源を国から移す,地方分権が進められている。
    2.地方議会の仕組み
    <地方議会と首長及び直接請求権>
  • 地方議会の仕事
    ・地方公共団体の住民から直接選挙された議員によって構成される地方議会で,
     独自の法である条例が定められ,予算を議決する。
  • 首長の仕事
    ・内閣総理大臣と違い,住民からの直接選挙で選ばれるので,
     住民にとっては首長と議員を共に直接選挙で選ぶ・・・二元代表制
     →地方自治の特徴といえる。
    予算案を作成して議会へ提出し,議決された予算を執行するとともに,
     財源となる地方税を徴収する。
  • 地方議会と首長の関係
    ・首長は議会が議決した予算や条例を拒否点審議のやり直しを求める事ができ,
     また,議会を解散できる。
    ・議会は首長の不信任を決議できる。
    ・首長と議会は互いに抑制しあっており,均衡を保つ関係にある。
  • 直接請求権
    ・住民の意思をより強く政治に反映させるために,
     直接民主制の要素を取り入れた各種の請求である。
    首長・議員を辞めさせたい場合,有権者の1/3以上の署名を集めれば,
     住民投票が実施され,有効投票の過半数の賛成で解職される。(=リコール)
    ・議会の解散を求める場合も,有権者の1/3以上の署名により住民投票となる。
    条例の制定・撤廃監査請求には,有権者の1/50以上の署名があれば,
     条例については議会,監査請求に関しては監査委員が,
     請求の要旨に基づいて取り組み,結果が公表される。
    3.地方財政の仕組みと課題
    <地方財政の仕組み>
  • 自主財源と依存財源
    ・地方公共団体が住民から集める地方税が主な自主財源だが,
     全収入の4割程度で,(4割自治の語源)地方債を入れても5割強程度で,
     そのため,国から一般財源として地方交付税交付金,,
     特殊財源
    としての国庫支出金という依存財源で賄っている。
  • 税源移譲
    ・2007(H19)以降,国税を減らし,地方税を増やすことで,
     国の税収を地方税収に移す,税源移譲ガ進められている。
    <地方公共団体の財政健全化>
  • 財政立て直し
    日本経済の低迷による地方税収の減少財政難に対処しようと,
     公務員を減らし,地方事業を縮小したりして立て直しに努めている。
  • 平成の大合併
    ・地方分権改革の一環として1999(H11)~2006(H18)迄に,市町村数が3232→1821に減少する,
     平成の大合併が進められた。
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